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資料・解説 石灰岩と独特な地形

石灰岩
 炭酸カルシウムCaCO でできた堆積岩を石灰岩と言います。もっともありふれた堆積岩のひとつで、日本にもたくさん見られます。海水中で無機的に生成沈殿したものと、本文でも述べたように、サンゴなどの生物の骨格や殻として生成した炭酸カルシウムCaCO が堆積したものがあります。両者の区別は簡単ではありませんが、後者が主であると考えられます。
 石灰岩は、しばしば生物の化石を含みます。地質学者にとって、石灰岩は地層堆積の時代や環境を知るための重要な情報源です。多くの石灰岩は現在の海のサンゴ礁と同じく、暖かな浅海にできたと考えられます。例えば火山島や海山(海底火山)の頂部、大陸棚などが想定されます。まれに炭酸カルシウムのマグマも知られていて、これが固まった岩石はカーボナタイトと呼ばれ、石灰岩とは区別します。
 デパートなどの内装用石材としてもっとも使われているのが石灰岩です。白、赤、黄や縞模様の美しい石材を見たら、石灰岩と思って良いでしょう。よく見ると、しばしば化石を見ることができます。また、庭石用の砂利にも白い石灰岩(大理石)をよく見かけます。

図1 フズリナ石灰岩
一面に見える数mmの灰色の斑点はフズリナと呼ばれる古生代を代表する生物の化石。

方解石
 写真の石灰岩は灰色に見えます。純粋な炭酸カルシウムは白色ですから、この試料はかなりの不純物(泥など)を含んでいることになります。純粋な炭酸カルシウムが結晶すると、方解石という鉱物結晶になります。

図2 方解石の大型結晶
無色透明で、ゆがんだマッチ箱のような独特な形をしている。
比較的柔らかく、ナイフで傷がつく。大きな「複屈折率」を持つため、いわば光を二つに分ける性質があり、透明度の高いものでは、写真のように像が二重に見える。
図3 方解石と結晶質石灰岩(大理石)
右は阿武隈山地(阿武隈鍾乳洞)の試料で、ほぼ方解石のみからなる純粋な大理石で、真っ白である。

 方解石は岩石の構成鉱物として、ごくありふれたものですが、大きな結晶は写真のように面白い特徴があります。マッチ箱を斜めに歪ませたような独特の形をしています。また、大きな複屈折率を持つせいで像が二重に見えます。石灰岩が堆積後の地殻変動により地下深所に持ち込まれ、高温高圧で再結晶すると、大粒の方解石が集まった岩石になります。このような岩石は一種の変成岩であり、結晶質石灰岩と呼びます。結晶質石灰岩には見た目の美しいものが多く、大理石とも呼ばれます。もともとの石灰岩が炭酸カルシウム以外の成分を多く含む場合には、結晶質石灰岩にも方解石以外のさまざまな鉱物が生成します。

鍾乳洞とカルスト地形
 本文でも述べたように、炭酸カルシウムは酸に溶けやすい性質を持ちます。雨水や地下水は、二酸化炭素が溶け込んでいるせいで弱い酸性を示し、少しずつ炭酸カルシウムを溶かしていきます。そこで、石灰岩でできた土地は地下水に溶かされて独特な地形を作ります。その代表が、鍾乳洞です。鍾乳洞は日本全国にたくさんあり、たいていは観光地になっていますから、一つ二つは入った経験をお持ちの方が多いと思います。龍泉洞、安家洞(岩手県)、阿武隈洞(福島県)、秋芳洞(山口県)が特に有名です。東京近郊では日原鍾乳洞(奥多摩)などがよく知られています。

図4 阿武隈山地、入水鍾乳洞
 ロウソクを手に、時には腹這いになって水に浸かりながら狭い洞窟を行く。観光洞とは思えない面白さ。1988年撮影。

図5 マレーシア・ボルネオ島・ムルの石灰岩
世界最大と言われるディア・ケイブ入り口のある石灰岩の大岩壁。いくつかある鍾乳洞は、観光洞でも美しい。探査中の洞も多いと聞く。
図6 ディア・ケイブDeer Cave
入り口の開口部、写真ではスケールが伝わらないが、本当に大きい。これだけ大きいと、乾燥して鍾乳石の成長はなく、崩壊を待つだけのようだ。洞内はグアノ(コウモリの糞)の異臭が立ちこめる。
   
図7 同じくムルのウィンド・ケイブWind Cave
天井からしたたり落ちる地下水から、飽和した炭酸カルシウムが結晶して、石のつらら−鍾乳石−ができる。鍾乳洞と言えば、この白い鍾乳石の作るさまざまな造形がまず印象的。
図8 同じくムルのクリアウォーターケイブ
入り口の鍾乳石。植物が着生していて、崩壊が始まっている。鍾乳洞の形成も広い意味の浸食作用であることが分かる。

 また地表の石灰岩が雨水により溶けて凸凹の地形になったのが、カルスト地形です。日本では山口県の秋吉台が有名です。写真は四国山地のカルストです。

 
図9 四国カルスト
 姫鶴平から五段高原を望む。秩父帯の石灰岩が東西数10kmにわたり露出する。風力発電用の風車が見える。
図10 四国カルスト・五段高原
 
石灰岩の凸凹が独特の景観を作る。ここは牧場として牛が放牧されている。

 日本にも石灰岩はたくさん産します。日本の石灰岩は古生代〜中生代の海山(海底火山)の頂部にできた造礁サンゴが、海洋プレートの沈み込みによって日本列島に付加したものが大部分です。石灰岩はセメントの材料になるため、盛んに採掘されます。このため秩父の武甲山(石灰岩の巨大な塊のような山です)などは、すっかり姿が変わってしまいました。