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総合テーマ・二酸化炭素と地球(その1)

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 二酸化炭素は水や酸素とならんで、私たちにとってごくありふれた物質ですが、地球の中でもとても重要な役割を果たしています。最近では温室効果気体として、地球温暖化の原因物質と考えられています。本章では、二酸化炭素の由来や、その役割について、総合的に学んでみましょう。

二酸化炭素はどんな物質か
 1個の炭素原子と2個の酸素原子が共有結合で結びあうと、ひとつの二酸化炭素分子CO ができます。常温常圧では気体で、炭酸ガスと呼ばれるときもあります。−79℃以下で固体、すなわちドライアイスになります。
 私たち生物の体は炭素C、水素H、酸素O、窒素Nなどが複雑に組み合ってできた分子(有機物と呼ぶ)からできています。この有機物分子のいわば骨組みに相当する部分を担うのが炭素原子ですが、この炭素原子は二酸化炭素に由来します。また、私たちが酸素呼吸で摂取する酸素分子O も二酸化炭素に由来します。二酸化炭素は無機物でできた地球と、私たち生物の架け橋のような役目を担っています。

図1 地球大気をつくる主な分子たち
カッコ内は分子量
 N 78%
 O 21%
 Ar  1%
 CO 0.036%
 HO 不定

実習 ドライアイスで遊んでみましょう

地球大気には二酸化炭素が少ない 

図2 金星、地球、火星の大気組成の比較
 ただし大気の絶対量(濃さ)は三者で大きく異なる。金星は地球の100倍、火星は逆に1/100である。

 地球と、両隣の惑星、金星と火星の大気組成を比べたのが図2です。金星も火星も大気の主体は二酸化炭素です。一方、地球大気には二酸化炭素はわずか0.03%しか含まれていません。太陽系の惑星は木星のようなガス惑星(木星型惑星)と、地球のような岩石惑星(地球型惑星)に分かれますが、もともと地球型惑星の大気は二酸化炭素を主体としたもので、地球だけが例外的に二酸化炭素が少ないのだと考えられます。地球も誕生当時には、現在の金星のように濃い二酸化炭素の大気を持っていたと考えられます。

白い石(石灰岩)になった二酸化炭素
 デパートなどの内装材として白、ピンク、黄などの美しい大理石をよく見かけます。石灰岩炭酸カルシウムCaCO からできた岩石の総称で、石灰岩のうち美しいものを大理石と呼んでいます。石灰岩に酸(塩酸、酢酸など)をかけると、二酸化炭素の泡が出てきます。この化学反応を化学反応式で表します。

CaCO     + 2HCl  →  CO +  CaCl + HO ・・・・・(1)
炭酸カルシウム   塩酸     二酸化炭素

(1)式から、炭酸カルシウム CaCO= 1に対し、二酸化炭素CO =1が発生することが分かります。CaCO の分子量はちょうど100、CO は44ですから、100gのCaCO から44gのCO が発生することになります。学校でおなじみのチョークもCaCO でできており、一本約100gですから、その半分は二酸化炭素を閉じこめたものと思ってください。
 石灰岩はもっともありふれた堆積岩のひとつです。堆積岩であると言うことは、地表にあった物質が少しずつ海底にたまって地層をなした岩石であると言うことです。実は誕生当時大量にあった二酸化炭素は、現在では大部分この白い石−石灰岩−に姿を変えてしまったのです。
 それでは、どのようなしくみにより二酸化炭素が石灰岩になったのでしょうか。その役目を果たしたのはサンゴなどの生物です。炭酸カルシウムは文字通り、炭酸ガス(二酸化炭素)とカルシウムからできると考えて良いでしょう。このうち二酸化炭素は、大気から海水中に大量に溶け込んでいます。一方、カルシウムはどのように供給されたのでしょうか。

CaSiO + 2CO  +  HO  → Ca2+  +  2HCO3− + SIO ・・・・・(2)
岩石      二酸化炭素         カルシウムイオン

(2)式は、二酸化炭素の溶け込んだ雨水が、地表の岩石の成分をカルシウムイオンなどとして溶かし出す様子を表しています。岩石としたCaSiOはヴォラストナイトという輝石の一種に相当しますが、希な鉱物で、ここでは地殻物質(岩石)を代表する仮想的なものと考えてください。

 Ca2+   +  2HCO3− → CaCO  +  CO +SiO ・・・・・(3)
カルシウムイオン          炭酸カルシウム

(3)式は河川によって海にもたらされたカルシウムイオンが炭酸カルシウムになる様子を表しています。最初はおそらく海水中の無機的反応として、後にサンゴなどの生物が自らの骨格や殻とするために、大量の炭酸カルシウムが作られました。これらの生物が死ぬと、骨格や殻は腐らずに海底に次々と堆積し、やがて石灰岩になります。石灰岩をよく見ると、しばしばこれらの生物の化石が含まれています。
 以上の(2)式、(3)式を足し算すると、(4)式となります。

CaSiO + CO     →  CaCO  +  SiO ・・・・・(4)
岩石     二酸化炭素    炭酸カルシウム

大局的には(4)式により、大気中の二酸化炭素は除去されてきたと考えて良いでしょう。*1 すなわち、大気中の二酸化炭素は、主に生物の力により、石灰岩として閉じこめられてしまったわけです。

図3 いろいろな石灰岩
 サンゴ礁はサンゴが死んで炭酸カルシウムの骨格だけが残ったもの。写真はそのかけらが転石になったもの。
 フズリナ石灰岩は炭酸カルシウムの骨格を持つフズリナという古生代の生物が堆積してできた石灰岩。写真では分かりにくいが、一面の白っぽい斑点はフズリナの化石。
 石灰岩が地下の高温高圧で再結晶すると、炭酸カルシウムの結晶(方解石)が大きく成長して結晶質石灰岩=大理石になる。

実習 いろいろな岩石、貝殻、サンゴなどを酸で溶かしてみましょう

資料・解説 石灰岩と独特な地形

黒い石(化石燃料)になった二酸化炭素
 二酸化炭素と生物の関係を考えるとき、もう一つ大切なことがあります。それは、光合成です。
光合成は以下のような化学反応式で表すことができます。

CO    + HO  →  CHO*  +  O ・・・・・(5)
二酸化炭素   水        (有機物)     酸素

 (5)式右辺のCHOはC、H、Oが1:2:1の割合で化合した分子という意味で、実際にはC12 (ブドウ糖分子)ですが、ここでは省略した形でCHOと書きます。これは、私たち生物のエネルギー源や体そのものをつくる有機物に他なりません。すなわち、光合成とは二酸化炭素と水から、有機物を合成するしくみです。この反応にはご存じのように太陽エネルギーが必要であり、その分だけ右辺の有機物(や酸素)は多くのエネルギーを持っています。つまり光合成は太陽エネルギーを、使いやすいエネルギーの缶詰(有機物が持つ化学エネルギー)に仕立て上げるしくみです。
 現在の地球で光合成の多くを担っているのは植物であり、特に熱帯雨林が重要です。ただし長い地球の歴史の中で、植物が繁栄する以前の時代には、ラン藻などの光合成細菌が果たした役割も大変重要です。いずれにせよ光合成により生産された有機物を、今度は動物が食べ、それをまた別の動物が食べ・・・と有機物は食物連鎖と呼ばれるつながりを経て循環します。ただし、その一部、例えば枯れた植物が地層に埋もれて、有機物のまま地下に閉じこめられる場合があります。石炭、石油、天然ガスなどは、そのようにして地層に埋もれた有機物です。つまり、姿は変わり果てたとは言え、一種の化石であることから、化石燃料と呼ばれます。これが燃料になるのは、エネルギーの缶詰、つまり有機物だからです。

図4 石炭
 地質年代表を見ると、古生代の中に石炭紀という時代がある。この頃、初めて陸上に繁栄したシダ植物たちの遺骸が地層の中に埋もれて、有機物のまま姿を変えたのが石炭である。まぎれもない植物の化石である。
(ただし、日本の石炭は後の第三紀のもの)

 以上のように、二酸化炭素の一部は、化石燃料という形で地層の中に蓄えられました。いわば二酸化炭素は黒い石(石炭など)に姿を変えたわけです。


*1 陸上岩石の風化だけではカルシウムが足りないと言われてきました。最近では、中央海嶺の熱水循環(海底温泉)から供給されるカルシウムもかなりの量になることが分かってきました。