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ホーム目次/第4章 地球と生命の歴史
原始地球生命と地球の共進化化石と地質年代表地殻の進化人類


霊長類から人類へ
 サルの仲間を霊長類と呼びます。中生代にはまだ小さなネズミのようであったホ乳類は、恐竜の絶滅後に、さまざまな環境(ニッチ)に進出し、適応放散を行いました。霊長類は、ホ乳類共通の祖先から別れ、樹上生活者として進化した者たちです。原始的な原猿類、新世界猿、旧世界猿、その中の類人猿と、多くの種類があります。私たちの体の特徴である、ものをつかむのに適した親指が離れた手、遠近感に優れた顔の前に2つ並んだ目などは、樹上生活者として適応した祖先の特徴を引き継いでいます。霊長類のあるものは、再び地上生活〜半地上生活を行うようになり、その中でも直立二足歩行を行い、草原で暮らすようになった動物が、最初の人類です。人類と最も近縁の種はチンパンジーです。系統樹が彼らと分かれたのは、およそ500万年前と考えられます。*1

図1 霊長類の進化
 霊長類は全体としてみると樹上生活者として進化したが、一部は地上生活に戻るものもあった。類人猿の中で、ゴリラやチンパンジーから分かれた系統のうち、草原へと進出した二足歩行動物が最初の人類であると考えられる。

 最初の人類はアフリカに登場したアウストラロピテクス(猿人)です。彼らは小柄で脳堆積も500mlほどですが、人類のゆえんである二足歩行を始めていました。結果的に、二足歩行は、頭の重さを支えやすいために脳の発達が可能となり、また手が進化することも可能になりました。その後、人類もいくつかの系統に枝分かれしましたが、私たちホモ・サピエンスを除いて、すべて絶滅しました。次に登場したホモ・ハビリスやホモ・エレクトス(原人)では次第に脳堆積が約1000mlまで増加し、順次、石器の使用、火の使用が始まりました。数万年前に生きていたネアンデルタール人は、脳体積も1500mlと大きく、私たちホモ・サピエンスにかなり近い種である考えられます。

図2 脳体積の推移から見た霊長類の進化
 人類の進化はわずかな化石から推定しているので、確かなことは分かっていない。いくつかの系統に枝分かれしたが、現存しているのはもちろん私たちホモ・サピエンスのみである。

実習 自分の頭骨の大きさを計り、脳体積を推定しましょう

世界に拡がるホモ・サピエンス
 私たちホモ・サピエンスは約20万年前、アフリカに登場しました。*2 アフリカで進化した後、10万年前にはアフリカを出て、西ユーラシア地域(中東〜ヨーロッパ)に進出しました。さらに東のアジア地域に進出し、一方はオーストラリアから太平洋へ、一方はベーリング海峡を越えて北アメリカから南アメリカへと進出しました。このようにしてアフリカから世界に拡がったホモ・サピエンスが、各地のさまざまな環境に適応した姿が人種です。

図3 ホモ・サピエンスの世界への拡がり
 約20万年前にアフリカで誕生したホモ・サピエンスは、約10万年頃にアフリカを出て、世界中に拡がった。各地の環境に適応して「人種」に分化した。5つの色は遺伝的にも地域的にも近い5つの(先住)民族に対応する。

 日本人の祖先は、このようにホモ・サピエンスが世界に拡がる過程で日本にやって来た人たちです。まず、数万年前(氷期)にシベリアや中国など大陸から渡来した人たちがいて、彼らは氷期の終了ととも縄文人として定着します。縄文時代は1万年以上続きました。その後、2000年前になると、再び大陸から新しい人たちが渡来してきました。彼らは、西日本に広まった弥生人であり、やがて大和朝廷へと続いていきます。従って、私たち日本人は先着民族(縄文人)と、後着民族(弥生人)の混血です。アイヌ人や琉球人は、混血をのがれた縄文人の直系の子孫であると考えられます。
 アウストラロピテクス登場から500万年間、ホモサピエンス登場からでも20万年間、人類の人口は現在よりはるかに少なく、生態系に組み込まれて生きていました。ところが、氷期が終わり、農耕が始まった1万年前頃から人口が増え始め、近代以降は爆発的に増加中です。このような現象を人口爆発と呼びます。特に20世紀の増加はあまりに異常で、環境問題、資源エネルギー問題、食糧問題など、現代の社会問題の全ては、この人口爆発を背景としています。20世紀、21世紀は長い人類の歴史の中でも、特別な時代なのです。

図4 最終氷期後の人口増加

 


【*1】 ヒトとサルが別れた日
 チンパンジーとの共通祖先から最初のヒトが誕生した理由は何なのか。一つの仮説として、以下のようなシナリオを紹介します。
 当時のアフリカ東部では、マントル対流の上昇によりプレートの分裂が始まり、大地溝帯ができはじめました。そこではマグマ活動が盛んになって、高い火山(キリマンジャロ山など)が多数そびえるようになりました。高い山が水蒸気を含んだ大気の循環を妨げ、火山の東側では次第に気候が乾燥し、それまでの熱帯雨林がまばらになり、草原が拡がり始めました。このような環境変化に適応して、森林から草原へと生活の場を移していった2足歩行をする霊長類が、最初のヒト(アウストラロピテクス、ないしその原型)であったようです。もし偶然にも火山活動が起きなかったら、熱帯雨林の草原化がなかったら、今でもヒトはいなかったかも知れません。生物の進化には、このような偶然の要素が強く影響しているようです。

【*2】 ミトコンドリア・イブ
 私たちの細胞にある遺伝子DNAは、父親と母親から半分ずつもらったものです。ところが、同じ細胞の中にあるミトコンドリアという小器官(酸素呼吸を担う)もDNAを持っていて、これは母親のミトコンドリアがそのまま分裂してできたものです。つまり、ミトコンドリアDNAは、そっくり母親のものを受け継いでいます。そこで、このミトコンドリアDNAを調べると、母親だけを追いかけた家系図のようなものをつくることが可能です。そこで、多数のアメリカ人のミトコンドリアDNAを比べてみると、20万年前の一人のアフリカ人女性を共通の祖先としていることが分かりました。全世界の人のミトコンドリアDNAを調べるわけにはいきませんが、統計的に見て、このアフリカ人女性(正確には、その頃のアフリカ人女性の誰か)が、現在の人類の共通の母であると考えられます。彼女は、「アダムとイブ」にちなんで、「ミトコンドリア・イブ」と名付けられました。彼女は、私と今この文を読んでいるあなたの共通のご先祖様です。もっとも「アダムとイブ」のイブは、その時この世のただ一人の女性ですが、ミトコンドリア・イブはただ一人の女性というわけではありません。母親の血筋だけをたどると、みな彼女に行き着くという意味で、女性は男性と同数いたことでしょう。


作成2002年2月 最終更新2002年11月