ホーム/目次/第4章 地球と生命の歴史
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プレートテクトニクスの始まり
第V章でプレートテクトニクスについて説明しました。現在の地球表層部は数枚の硬い岩板(プレート)からなり、これが水平移動をしているため、プレート境界で地震、火山、造山運動などの変動が起きています。それでは、このプレート運動はいつ頃から始まったのでしょうか。原始地球の熱を逃がすため、マグマオーシャンの対流を引き継いだマントル対流が地球史初期から始まっていたことは間違いないでしょう。しかし、この対流がどのような形であったのか、いつ頃から現在のようなプレート運動が始まったのか、よく分かっていません。一部では太古代の付加体が発見されたと言います。次々項で説明するように、付加体の形成は海洋プレートの沈み込みによるので、太古代にはすでにプレートテクトニクスが始まっていた可能性があります。今より高温であった初期地球では、マントル対流のセル(対流の1単位)も今より小さかったことが予想されるので、今よりずっと小さい多数のプレートに分かれていたかも知れません。
超大陸の形成と分裂
第V章で、現在の大陸はパンゲア超大陸がバラバラに分裂したものであると説明しました。現在、大西洋やインド洋は拡大中であり、逆にユーラシア大陸の下に多くのプレートが沈み込みつつあります。このままいくと、やがてユーラシア大陸を中心とする次の超大陸ができます。プレート運動を長い時間スケールで見ると、このような超大陸の分裂から次の超大陸の形成までを一つのサイクル見なすことができそうです。このようなサイクルを、提案者でありプレートテクトニクス建設の第1人者であったツーゾー=ウィルソンにちなんで、ウィルソンサイクルと呼びます。パンゲア超大陸以前に遡るのは容易ではありませんが、数回のサイクル(数億年ごとに数回の超大陸形成)があったようです。
第V章で大陸地殻はカコウ岩質であると言いました。これは大陸地殻が、いずれも似たような化学組成の岩石、すなわちSiやAlに富んだ火成岩(カコウ岩や安山岩)、変成岩、堆積岩からできているので、最も一般的なカコウ岩に代表させているわけです。この大陸地殻はマントル(カンラン岩)、海洋地殻(玄武岩)と非常に対照的です。いつ、どのようにして大陸地殻ができたのか、ということは古くから地質学の問題でした。最近では同じ地球型惑星でも金星や火星には、プレート運動もカコウ岩質地殻もないことが分かってきました。プレート運動とカコウ岩質地殻は、地球型惑星(岩石天体)の中でも地球に特有のものかも知れません。現在の地球でカコウ岩質地殻を作っているのは、海洋プレートの沈み込み(島弧)です。海洋プレートの沈み込みと、それに伴う水の関与したマグマ活動が大陸地殻を作り続けてきたのなら、大陸の形成史はまたプレート運動の歴史に他なりません。大陸は少しずつ成長してきたのか、ある時期に大量にできたのかは地球史を考える上で大変興味深く、現在研究が進んでいます。
海溝で成長した日本列島
日本列島の土台をなす地層や岩石たちは、日本列島に沿う形で帯状に分布するので地質帯と呼ばれます。それぞれの地質帯ができた時期をみると、日本列島はアジア大陸側から外側(太平洋側)へ向かって成長してきたことが分かります(図1)。このような規則的な帯状配列は、実は日本列島のでき方を反映しています。
海洋プレートの上には点々と火山島があり、その上にはしばしばサンゴ礁(石灰岩)があります。また深海底にはプランクトンの死骸(チャート)が堆積しています。これら全ては海洋プレートに乗って移動し、ついに海溝のところまでやってきます。一方、海溝の内側には陸地の侵食によりもたらされた砂や泥が地層として堆積し、泥岩や砂岩になっています。外側からやって来た火山島(玄武岩)、石灰岩、チャートなどは、そこでこの泥岩たちの中に無理矢理押し込まれてゆきます。このように海溝内側では、プレートに乗ってやってきた物質が、内側からもたらされた物質とゴチャ混ぜになりながら付け加わってゆきます。このようにしてできたものを付加体と呼びます。付加体の一部はプレート運動によって地下深くまで引きずり込まれ、地下の高圧で再結晶して変成岩になります。以上のような付加体の形成は、海洋プレートがもぐり込むところ(海溝)に特有の現象です。
実は日本列島自体が、このような付加体からできています。アジア大陸の東縁で始まった海洋プレートのもぐり込みは、プレート運動(大陸移動)の影響を受けながらも数億年間続いていて、海溝でできる付加体が外側に向かって成長して日本列島になりました。特に古生代末以降は断続的に付加体が成長し、現在の日本列島の大部分をつくっています。海溝の直ぐ内側では現在も付加体が形成されつつあります。
海洋プレートの上にある大きな火山島などは、海溝からマントル深部へもぐり込んでゆくことができず、そのまま置き去りにされます。言い換えると、一つの陸地が衝突し、付け加えられたことになります。例えば、伊豆半島はこのようにして南からやってきた陸地が第四紀になり日本列島に衝突・付加したものです。伊豆の衝突はかなりのインパクトがあり、本州自体が大きくゆがんで湾曲しているほどです。
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図1 日本列島の成長 海溝陸側(b)には大陸側(日本列島側)からもたらされた泥岩・砂岩が堆積している。そこに海洋プレート上(a)の海山火山島、石灰岩、チャートがやってきて押し込まれてゆく。両者は変形しながら混合して、付加体と呼ばれる地質体をつくる。日本列島自身がこのような付加体の集合として、大陸側から外側(太平洋側)へ成長してきた。 付加体の岩石の一部は海洋プレートの沈み込みとともに地下深所に引きずり込まれ、高圧型変成作用を被る。付加体の中でも伊豆(赤)のように大きな火山島は沈み込めず、衝突・合体する。 |
| 付加体 (一部は高圧変成作用を被る) |
外側(海洋プレート)からもたらされた物質 | 海山玄武岩 | ![]() |
| 石灰岩 | |||
| 深海チャート | |||
| 海洋底玄武岩 | |||
| 内側からもたらされた陸源性物質 | 泥岩・砂岩 | ||
| 島弧マグマの活動によるもの | 地表に噴出した火山 (島弧火山帯) |
火山岩(安山岩など) | |
| 地下に貫入したマグマ (島弧火山帯地下) |
深成岩(カコウ岩など) | ||
| 低圧変成作用 (島弧火山帯地下) |
低圧型変成岩 |
実習 付加体の岩石を観察する
アルバム 地層を見る(付加体の地層)
作成2002年2月 最終更新2002年12月