ホーム/目次/第4章 地球と生命の歴史
原始地球/地球年代表/生命誕生/生物の進化と絶滅/地殻の進化/人類
岩石の絶対年代
前節で、太陽系や地球の誕生は46億年前であったと述べました。その理由は、太陽系の材料になった隕石の生成年代が46億年前であるからです*1。 ところで、隕石や岩石のできた年代がどうして分かるのでしょうか。それは岩石に含まれる放射性元素によります。ウラン238などの放射性元素(親元素)は時間とともに自然に核分裂を起こし、やがて鉛82などの別の元素(娘元素)になります。このような放射性元素の壊変は必ず一定の時間で進行するので、岩石の中に含まれる親元素と娘元素の割合が分かれば、その岩石ができてからどのくらいの時間がたったか見当がつくことになります。このようにして計った岩石の年代を放射年代と呼びます。放射年代は具体的な数字を与えてくれるので、絶対年代とも言います。これに対し、地層や化石の新旧から判定する年代は相対的な順序だけなので、相対年代と言います。放射年代は、地質学から考古学まで、年代決定の武器として非常に強力です。地球の歴史を科学として定量的に論ずることができるようになったのは、この放射年代が戦後広く普及したからです。
地質年代表
世界史・日本史をいくつかの時代に区分するように、地球の歴史46億年もいくつかの時代に区分されています。表1は主な時代を表しています。地球誕生から数億年間は、当時の岩石がまったく残っていない時代であり、冥王代と呼ばれます。私たちも赤ん坊の頃の記憶がない如く、冥王代のことは間接的に推定するより他はありません。従来は冥王代と、続く太古代・原生代を一括して先カンブリア時代と呼ぶことが多かったのですが、最近では高校教科書でも冥王代・太古代・原生代の3分割が紹介されるようになりました*2。なお太古代と原生代の境界は25億年前ですが、これには(現在の知識では)さほど大きな意味はありません。
顕生代は一転して、非常に細かく分割されています。5.7億年前以後は、顕生代の名の如く、さまざまな化石が多数産出するようになるので、これに基づいた細かな時代区分が可能だからです*3。世界史・日本史の年表もそうですが、最近のことほど詳しく分かっているため、すべてを1枚にまとめた年表は、どうしても時間軸の刻みが歪んだものになります。そのため、ここでは全体を3枚の年表で表しました。原生代以前(先カンブリア時代)がいかに長いか、第四紀(人類時代)がいかに短いかがよく分かると思います。

表1 地質時代の区分
実習 地球史を1年に例える(地球史カレンダー)
【*1】 隕石の生成年代にはバラツキがありますが、後の変化を被っていない始源的な隕石と考えられるものの生成年代は46億年前に集中します。形成時のまま残っていると考えられる月の古い岩石もやはり46億年前です。これらの事実と、太陽系誕生の理論的モデル(星間物質の収縮による誕生)を併せ、太陽系と地球の誕生は46億年前と考えられています。
【*2】 1960年代くらいまで、伝統的な地質家(特に日本人)にとって、先カンブリア時代はまるで別世界のようでした。化石・地層という研究手段が使えないこと、何より日本に先カンブリア時代の地層・岩石が無いことから、それは無理もないことでした。高校地学などでも、地球史はまるで古生代から始まる・・・のごときでした。しかし近年、先カンブリア時代の研究は大幅に進み、日本人研究者も進出しています。普及書にも先カンブリア時代の話題が多くなってきました。例えば熊沢峰夫・丸山茂徳ら(全地球史解読計画)は、地球の歴史(不可逆過程)上の重大(高次)な出来事に注目して地球史を編むことを強調し、地球史七大事件を提唱しています。まさに隔世の感があります。
| 地球史七大事件(例えば熊沢他2002、全地球史解読、東京大学出版会による) | ||
| 第1事件 | 46億年前 | 地球誕生と核・マントル分化 |
| 2 | 40億年前 | プレートテクトニクス開始 |
| 3 | 27億年前 | マントルオーバーターン(マントル対流が一層対流に) |
| 4 | 19億年前 | 最初の超大陸 |
| 5 | 7.5億年前 | マントルへ海水の逆流開始 |
| 6 | 2.5億年前 | アフリカスーパープルームの誕生と史上最大の生物絶滅 |
| 7 | 現在 | 人類と科学(知性)の誕生 |
【*3】 化石を基準にした地層の対比による年代区分は、19世紀以来の伝統的地質学のいわば王道でした。そのため今でも高校教科書には、地質調査や柱状図の対比、地質年代表、化石の種類が詳しく取り上げられています。しかし私はこれほどページを割く必要はないと考えています。またカンブリア紀、オルドビス紀・・・などの紀の名前を暗記する必要はないと思います。
もちろん専門の地学研究の中では野外調査や化石研究は今でも大変重要です。1980年代に日本列島が付加体であることを明らかにし、変動帯研究を国際的にも大きくリードした原動力は、放散虫と呼ばれる微生物(プランクトン)の化石による年代決定です。それを引き継いだ1990年代も、精密な地質調査に基づく放射年代測定が威力を発揮しました。
作成2002年2月 最終更新2002年12月