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実習 岩石薄片の偏光顕微鏡観察
入門編/観察編(資料・薄片写真)薄片の作り方

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【入門編】

【使うもの】
偏光板2枚、スライドガラス、セロテープ
【手順】
1)適当に切ったセロテープ5〜6片をスライドガラスにランダムに重ねて貼る。
2)2枚の偏光板ではさんで見る。中のスライドグラスを回転させながら見る。
3)今度は偏光顕微鏡で見る。
 

操作手順
@偏光板上を出した状態で、凹面鏡を調節し光を導き入れる。暗いと見にくい。
Aスライドガラス(薄片)と対物レンズの距離を調整してピントを合わせる。対物レンズで薄片を突き破らないように!
B偏光板を出し入れして、色の付き方の違いを確認
C回転ステージを回し、色の変化を見る


【結果と解説】
 透明に見えたセロテープが2枚の偏光板ではさんで見ると、まるでステンドグラスのように美しく色がついて見えます。偏光板は光の振動方向を一つにそろえる働きがあります。このような光(偏光)が、セロテープや鉱物の結晶のように、光に対し方向性(光学的異方性)のある物質を通過すると、干渉色という色が見えます。ガラスはそのような性質がないので、偏光板にはさむと真っ暗になります。
 岩石鉱物用の顕微鏡も、2枚の偏光板でプレパラートをはさんで見られるようになっています。セロテープを貼ったスライドガラスを偏光顕微鏡で見ると、美しい干渉色が見えるはずです。また偏光顕微鏡のステージは回転式になっていますので、グルグル回してみると干渉色が変化して、まるで万華鏡のようです。

偏光板ではさんで見たセロテープ

【観察編】
【手順】
 セロテープで練習したのと同じように、岩石薄片(プレパラート)を観察する
 

【結果と解説】  火成岩の分類は本文参照
 安山岩などを見ると、大きな鉱物が目立ちます。これは斑晶と呼ばれ、地下のマグマだまりでゆっくりと成長していた鉱物結晶です。これが噴出・急冷し、周囲の液体(マグマ)部分は小さな結晶になっているので火山岩です。このような様子を斑状組織と言います。安山岩など斑晶の目立つ岩石を肉眼観察すると「鉱物が大きい=深成岩」と鑑定する人がいますが、顕微鏡で見ると斑状組織(火山岩)であることが分かります。
 急冷により液体が結晶とならずに(原子が規則正しく並ばずに)固結したもの、すなわち原子が規則正しく並んでいない状態をガラス(非結晶)質と言います。ガラスは「上偏光板あり」では真っ暗に見えます。不透明鉱物(磁鉄鉱、チタン鉄鉱、赤鉄鉱、黄鉄鉱など酸化鉱物、硫化鉱物が多い)は、文字通り不透明で、偏光顕微鏡による鑑定は難しいので、ここでは省略しました。

【資料・岩石薄片写真】
主な岩石の偏光顕微鏡写真(3mm×3mm)。撮影は顕微鏡接眼レンズに手持ちでデジカメをつけて行いました。

火成岩(火山岩)
上偏光板なし 上偏光板あり
玄武岩1
斜長石、単斜輝石、カンラン石の小さな斑晶と、斜長石(針状)、単斜輝石(粒状)の石基からなる。全体に細粒で、典型的な玄武岩。
玄武岩2(河口湖)
同じ玄武岩でも1に比べて斜長石の大きな斑晶が目立ち、石基はよりガラス質。玄武岩にしては斑晶が多い。
安山岩(諏訪市上諏訪)
斜長石、斜方輝石、単斜輝石の斑晶と、ガラス、斜長石(針状)の石基からなる。ふつう安山岩はこのように斑晶が目立つ(斑状組織)。斑晶は地下のマグマだまりで成長中であった鉱物結晶。そのときにはまだ液体(マグマ)であったものが、噴出・急冷により固結して石基になった。
流紋岩(姫路市白浜町)
石英、斜長石(Na−Ca長石)、カリ長石(K−Na長石)の斑晶と、ガラスの石基からなる。石英と長石は間違えやすい。斜長石とカリ長石の区別はさらに難しい。

火成岩(深成岩)
ハンレイ岩
斜長石、単斜輝石からなる。深成岩は写真のように鉱物が大きく、完全に結晶している(ガラスがない)ので、地下でゆっくり冷えたことが分かる。写真では少量の普通角閃石(ホルンブレンド)を含む。
閃緑岩
斜長石、普通角閃石(ホルンブレンド)、黒雲母からなる
カコウ岩(笠間市稲田)
斜長石、カリ長石、石英、黒雲母からなる。
カンラン岩(ダナイト)(北海道カムイコタン帯岩内岩体)
カンラン石、スピネルからなる。斜方輝石や単斜輝石をかなり含むものもある。

変成岩
緑色片岩(埼玉県関東山地、三波川変成岩)
細粒で分かりにくいが、斜長石(Na長石)、緑泥石、アクチノ閃石、緑レン石、石英などからなる。大きな斑状の部分は再結晶作用によってできた斜長石(斑状変晶)。玄武岩質の岩石が比較的低温(緑色片岩相)の変成作用を被ってできた岩石。日本の典型的な変成岩。
石英片岩(埼玉県秩父、三波川変成岩)
石英、紅レン石からなる。チャートが比較的低温(緑色片岩相)の変成作用を被ってできた岩石。
藍閃石片岩(徳島県、三波川変成岩)
藍セン石、斜長石、石英などからなる。藍セン石(藍色の結晶)は高圧型変成作用に特徴的な鉱物。


教員用レシピ
【使うもの】
偏光顕微鏡、照明装置
(入門編)セロテープ、スライドガラス、偏光板
(観察編)岩石薄片各種、顕微鏡TV投影装置
【時間】
1h〜2h
■たまたま作者の勤務校は偏光顕微鏡の台数が多いので、生徒実習で観察を行っています。。安い偏光板を工作して生物顕微鏡で観察することも可能です。この場合、回転ステージがないので消光角の確認などはやりづらいですが、玄武岩とカコウ岩など、典型的な火成岩の観察程度なら十分可能です。
■教師用顕微鏡にTV投影装置をつないだり、このページのようなデジカメ写真をモニターで演示したら有効でした。


【付録】 岩石薄片のつくり方

【使うもの】
岩石サンプル、電動岩石カッター、鉄板、ガラス板、スライドガラス、研磨粉(カーボランダム#120,#500、#1000など)、2液式セメダイン、ホットプレート、水差し、雑巾、(カバーガラス、カナダバルサム、透明マニキュア)
【授業時間】
4h〜5h

電動岩石カッター
このような小型は実に使いづらいが、高校にあるのは、せいぜいタイプでしょう。
鉄板、ガラス板
研磨粉(カーボランダム#120,#500、#1000)異なる研磨粉が混ざると失敗するので、色違い(黒・緑・白)の商品が便利。

【手順】

電動岩石カッターでサンプルを適当な大きさにカットする(写真A)。ハンマーで砕いてもよいが、なかなか手頃な大きさのものを得にくい。少なくとも一面(接着面)をカッターで平面にカットすると、次工程が楽。
サンプルの一面を研磨粉で研磨する。#120(鉄板)、#500(鉄板)、#1000(ガラス板)と順に細かい研磨粉に進む。各段階5〜10分くらい。各段階の終了は必ず目で見て確認する。よく洗って水気を軽く切り、斜めにすかして見ると分かりやすい。研磨面が#120ではザラザラ、#500ではサラサラ、#1000ではスベスベになる。
2液式セメダイン(6時間硬化型スーパーセメダインなど)で、サンプルとスライドガラスを接着する(写真B)。ホットプレートでサンプルやスライドガラスを温めておくと、セメダインが軟らかくなり作業がしやすい。スライドガラスをグリグリと回しながら、気泡を追い出す。乾燥、固結時にずれてしまわないように、セロテープで軽く巻いておくとよい。
*スライドガラスの片面を予め#1000で軽くこすり、曇りガラスにしておくと、セメダインの食いつきがよく、その後の失敗が激減する。秘伝のコツ!
*その昔、この工程はレーキサイトセメントで行ったが、現在ではセメダインの方がはるかに優れている。
2次切断。工程最大の難関。電動岩石カッターでサンプルを切断し、Cのような状態にする。残った岩石が薄いほど次工程が楽になる。慣れれば1mm厚以下に切断できるが、失敗が怖いので、2mmくらいをめどにすると良い。
2と同じように研磨粉で研磨し、次第に岩石を薄くし、0.02mm厚にまでする。#120段階は時間がかかるので、ガリガリと力押しでゆく。光がうっすら透けるくらいになったら#1000にゆく。#1000ではチョット油断して削り過ぎたら、もう何も残っていなかった、となりがち。最終段階は偏光顕微鏡で厚さを確認しながら、慎重に薄くしてゆく。目安として、斜長石や石英の干渉色が黄色になったら完成間近。(ここだけは教員が助けた方が良いかも)
カナダバルサムを用いてカバーガラスをかける工程は手間がかかるが、透明マニキュアを塗ることで十分代用できる。
*マニキュアは年数が経つと変質して見づらくなる。その場合はアセトンでぬぐって、もう一度塗り直す。作者の薄片の中には、10年以上経ってもあまり変質していないマニキュアもあるが、商品による違いがあるようだ。保存用プレパラートとしては、やはりバルサムでカバーガラスをかけたものが良い。

■作者は時間と手間がかかるので、授業での岩石プレパラートづくりは久しくやっていません。かつて「困難校?」にいた時によくやったのですが、「工芸的」面白さを感じるせいか、生徒は「石削り」と称して結構まじめに取り組んでくれました。
■慣れれば40人展開の授業でも可能ですが、体力的(?)にちと辛い。それでも少人数授業や部活、「総学」などで、まだまだ価値ある実習だと思います。
■最大の泣き所は電動岩石カッターです、高校には作業性の悪いチャチなのしかない。大学にあるような、手動の大型装置が使えれば、チップの切り出しや2次切断などが大変能率的に行えるのですが・・・