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ホーム目次第3章 熱い岩石の星・地球
火山マグマ鉱物と岩石地震地球内部を探るプレートテクトニクス大陸移動と造山運動

サブテーマ(解説) 変成岩と変成帯


変成岩とは
 一度できた岩石が、地下で別の温度・圧力のもとにおかれ、再結晶した岩石を変成岩と呼びます。元になる岩石は堆積岩でも火成岩でもかまいません。変成岩が、別の新しい変成岩になることもあります。ここで再結晶というのは、元になる鉱物に化学反応が起きて、新しい別の鉱物(変成鉱物)が生じることで、固体のままの化学反応です。変成岩ができることを変成作用と呼びます。
 火成岩や堆積岩が中学理科から登場し、高校地学にも頻繁に出てくるのに対し、変成岩はあまり登場しません。教科書では造山運動とセットで扱われていますが、教員は敬遠しがちで、私自身授業では割愛しています。変成岩は見た目が地味で観察が難しい、分類の基準が複数あって分かりづらい、などがその理由でしょうか。しかし、地球の研究のためには実は大変重要な岩石で、プロの岩石学者の半分(?)は変成岩を研究しているほどです。と言うのも、変成岩はしばしば造山帯や古い大陸地殻に大規模に出現し、変成帯と呼ばれる地帯をつくります。変成帯はかつて地下深くにあったところが地表に露出している場所ですから、地球内部を直接観察できる貴重な場所です。深成岩やマントルの断片(カンラン岩)の研究も重要ですが、地下深部に関して広範な情報を提供してくれるのが、まずは変成岩なのです。

変成岩の分類その1−見た目の特徴による

 火成岩がマグマの種類(SiO量)と結晶の大きさ(火山岩/深成岩)という2つの基準ですっきりと分類されているのに対し、変成岩の分類はとても分かりづらいものです。まず、肉眼的な特徴をもとにした分類を紹介します。
 変成岩はよく、細かい層面が積み重なったような様子(面構造)を持ち、その面から薄く割れやすい性質を持ちます。黒雲母や緑泥石など、平べったい鉱物が並んでいるせいで、これを片理と呼びます。典型的な片理を持つ変成岩が片岩です。片理は、もともとの堆積岩の層理を反映している場合が多いようですが、そうでないものもあります。このような面構造の様子は、肉眼的には分かりやすい特徴であり、よく命名の根拠になります。また、特徴的な変成鉱物の名前を頭につけて呼ぶ場合があります。

片岩
(結晶片岩)
片理を持ち、薄く割れやすい。代表的な変成岩。
原岩により変成鉱物の種類が異なることから、見かけの色が異なり、緑色片岩(玄武岩起源)、黒色片岩(泥岩起源)、石英片岩(チャート起源)などがある。
また、目立つ変成鉱物の名前をとり、黒雲母片岩(黒雲母)、ラン閃片岩(ラン閃石)・・・などと呼ぶ。

(写真・・・結晶片岩、三波川変成帯、四国汗見川ルート、オリゴクレース黒雲母帯)
片麻岩 粗い白黒の縞模様を片麻状組織と呼び、これをもつ変成岩。砂と泥が交互に繰り返す地層が高温で変成するとできる。

(写真・・・片麻岩、阿武隈変成帯、竹貫変成岩)
千枚岩 泥岩起源の片岩のうち、変成温度が低く、黒色で細粒のもの。ペラペラと薄くはがれやすい。
ホルンフェルス 片岩や片麻岩のような面構造の目立たない変成岩。主に接触変成岩についての呼び名。

(写真・・・紅柱石ホルンフェルス)
大理石 石灰岩が変成して炭酸カルシウムの結晶(方解石)が大きく成長した変成岩。結晶質石灰岩とも言う。原岩の石灰岩が不純であると、それに応じていろいろな変成鉱物ができる。
角閃岩 斜長石と普通角閃石(ホルンブレンド)からなる変成岩。片理を持つものと、持たないものがある。比較的高温の変成作用による。
グラニュライト 粗粒の変成岩で、面構造を持たないもの。高温の変成作用による。
ミグマタイト 片麻岩(変成岩)とカコウ岩(火成岩)の中間的な性質を示すもの。変成作用の高温部では岩石の融解(マグマ発生)が始まる。
エクロジャイト 輝石(オンファス輝石)とザクロ石(MgFeザクロ石)からなる。
玄武岩の高圧相。珍しい変成岩。

 とりあえず変成岩を肉眼で見て名前を付ける場合には、このような分類を用います。しかし、これだけでは個々の変成岩が何を意味するのか、サッパリ分かりません。また、この分類に入らない変成岩もたくさんあります。そこで、その2のような、変成岩ができた条件(温度・圧力)による分類を行います。

分類その2−温度・圧力による(変成相)
 かつての地下の様子を知るためには、まずその変成岩ができた条件、中でも温度と圧力を知ることが第1歩です。ところがそれはなかなか難しいことなのです。
 ある変成岩の中に、AlSiOという化学組成の鉱物があるとします。その鉱物は、図1赤線のように、温度・圧力に応じて3種類の鉱物(藍晶石・紅柱石・ケイ線石)のどれかになります。そのどれであるかにより、図1の温度・圧力のどの領域か限定できることになります。
図1 変成作用の温度・圧力と変成相 

AlSiO鉱物
 AlSiO鉱物には化学組成が同じで、結晶構造(原子配置)の異なる3種類の鉱物(藍晶石・紅柱石・ケイ線石)がある。このような関係を多形と呼ぶ。写真の青い結晶が藍晶石。3つのうち、どの鉱物になるかは図1のように温度圧力による。これが逆に岩石の生成した温度圧力を推定する手がかりになる。

 このような変成鉱物の種類や化学組成を詳しく調べてゆくと、、変成作用の起きた温度・圧力をある程度絞ってゆくことができます。そのような作業をまとめたものが、図1にいくつか表した変成相です。変成相とは、温度・圧力に目安をつけるための、変成鉱物の組合せセットのことです。例えば、玄武岩起源の変成岩に緑レン石、緑泥石、アクチノ閃石、Na長石があれば、これは緑色片岩相にあたる・・・と言った具合です。ここで紛らわしいのは変成相の名前です。「緑色の片岩」という意味の「緑色片岩」と、相の名前としての緑色片岩は別物です。そのため、「ラン閃片岩相に属する緑色片岩」などというややっこしい岩石がしばしば登場します。図1に主な変成相を表しました。変成岩を顕微鏡で観察するときには、まず変成鉱物の組合せを確かめ、それが何相にあたるか注目します。

分類その3−原岩による
 同じ緑色片岩相に属していても、玄武岩が変成したものと、泥岩が変成したものでは、見かけも鉱物組合せも全く異なります。そこで、その2で述べた変成相を適用する場合、原岩が何であるかに注意する必要があります。原岩が泥岩や玄武岩の場合、温度・圧力の違いに応じて変成鉱物の種類が敏感に変化するので、特に注目されます。
 変成帯全体のでき方を考えるとき、一体何が変成したのかという問題も重要です。変成岩の中には、もとになった岩石の特徴をそのまま残していて、原岩が分かる場合があります。原岩を強調するときには、名前の頭に変(変成)とつけます。写真は玄武岩(左)とハンレイ岩(右)が、その組織をそのまま残して変成作用を被った例で、変玄武岩、変ハンレイ岩と呼びます。

変玄武岩と変ハンレイ岩(北海道日高帯、下川岩体)
 サンプルの右側は、斜長石と輝石からなる粗粒のハンレイ岩が緑色片岩相の変成作用を被ってできた変ハンレイ岩。もともとあった輝石(黒)が、形を変えずに角閃石(緑)や緑泥石(緑)になったため、ハンレイ岩組織(まだら模様)がそのまま残っている。左側は、ハンレイ岩に貫入した玄武岩脈(黒)が、やはり同じ変成作用を被ってできた変玄武岩(灰緑)。

分類その4−変成帯のでき方による

接触変成帯
(接触変成作用)
大きな深成岩体の熱により、周囲の岩石が変成したもの。 接触変成岩
(ホルンフェルスという名前は接触変成岩を指すときが多い)
広域変成帯
(広域変成作用)
変成帯が広域的に露出しているもの 片岩、片麻岩を始め、いろいろな変成岩が含まれる*1

 この2つは教科書でもよく紹介されていますが、小規模な接触変成帯を除けば、両者の区別はそれほど簡単ではありません。次項で紹介する低圧型の広域変成帯は、大量のカコウ岩を伴い、複数の接触変成帯が複雑に重なり合って、大規模な広域変成帯をなしている、とも言えるからです。

 ここでは4つの分類基準を紹介しましたが、実際には、1〜4が混在しています。野外で観察する機会があったら、とりあえず分類その1を試みて下さい。学校や博物館などで観察するときは、分類その2、3を試してみて下さい。

対になった変成帯

 変成岩の研究では、すでに述べたように、まず変成作用の温度・圧力を知ることが重要です。そのため、分類その2紹介した変成相の考え方が詳しく研究されました。日本では、都城秋穂という優れた指導者のオリエンテーションもあり、戦後この種の研究が大きく進みました。
 変成帯を歩いてみると、低温の変成岩の地域から、次第に高温高圧の地域へと移り変わってゆくのが分かります。世界のいろいろな変成帯について調べてみると、この温度・圧力の変化経路が、図2のように2つのタイプに分類されることが分かりました。一つ目は低温の割に圧力が高い高圧型(低温高圧型、青矢印)、二つ目は高温の割に圧力が低い低圧型(高温低圧型、赤矢印)です。そして、この2つのタイプの変成帯は、しばしば「対」になって造山帯に出現するのです。このことは、1960年代に都城秋穂が初めて唱え、プレートテクトニクスによる造山帯の解釈の中で大きな意味を持ちました。

図2 変成帯の圧力型
 変成帯に表れる温度圧力(変成相)をつないだ矢印*2を変成相系列(圧力型)という。変成帯を考えるときに最も大切な事柄。圧力型の分類にはいくつかあるが、ここでは最も簡単に高圧型と低圧型に分けた。前者は沈み込み帯、後者は主に島弧(火山弧)に相当する。中圧型は大陸衝突帯に相当するという意見もある。

 現在の考え(図3)では、海溝から沈み込んだ海洋プレート表層の玄武岩や、一緒に引きずり込まれた堆積物が、冷たいまま地下深所(高圧)で再結晶したものが、高圧型変成帯です。一方、島弧マグマが上昇して火山帯ができているところ(火山弧)は、広域的に温度が上昇して、低圧型変成帯ができます。すなわち、「対になった変成帯」は、過去の海溝−島弧(火山弧)の化石にあたるわけです。もし、古い大陸の中にそのような変成帯があれば、かつてそこは海溝−島弧であったことが分かります。
 近年、この2タイプよりはるかに高い圧力のもとでできた変成岩が発見され、超高圧変成岩として注目されています。古い大陸地殻の境界から産出するので、大陸プレートの衝突により、軽い大陸地殻の一部が地下100km(マントル)にまで持ち込まれて、再び上昇したことになります。


図3 海洋プレートの沈み込みと2タイプの変成作用

変成岩から分かること
 地質学はよく「逆問題」であると言われます。歴史資料の解読と同じく、あくまで地層や岩石に残された記録から、当時の状況を推定しているのだ、ということです。すでに述べてきたように、変成岩に残された情報から、具体的な温度・圧力を推定することはかなりできるようになってきました。しかし、変成帯はなぜそこにあるのでしょうか。変成作用は造山運動の中でどんな役割を果たしたのでしょうか。
 高圧型変成帯が海溝深所でできたことは間違いないでしょう。しかし高圧型変成帯はなぜ地表まで上昇したのでしょうか。必ず上昇するのでしょうか、それともたまたま上昇したものを見ているのでしょうか。
 低圧型変成帯の多くは島弧の地下でできたものでしょう。しかし、どのようにして厚い堆積岩の地層が変成作用を被るに至ったのでしょうか。一度できた島弧地殻(低圧型変成帯)は、その後どうなるのでしょうか。古い大陸地殻に見られる変成帯も同じようにできたのでしょうか。島弧の地下ではマグマ活動がありますが、これと変成作用はどんな関係にあるのでしょうか。
 変成岩の特徴であるさまざまな構造(面〜線構造など)から褶曲、変形、破壊などを具体的に解読できないでしょうか。変成作用時には物質の移動もあるのではないでしょうか。変成作用を起こすのは温度・圧力の変化だけでしょうか。
 「逆問題」を解いて、これらの疑問に答えるためには、今までは見えなかった記録を見る必要があります。近年、分析機器や理論モデルが急速に進歩し、変成岩研究は新しい時代を迎えています。また、変成岩だけからは読み出せない記録を、他の様々な情報で補い、造山運動を総合的に明らかにする研究も進んでいます。


【*1】 古い参考書や地理の参考書などで、「動力変成作用」「動力変成岩」という呼称が出てくる例があります。かつてハーカーは変成作用を、ストレス(ズレ応力)がなく高温高圧(静水圧)のみによる熱変成作用と、ズレ応力による動力変成作用に分類し、1950年代までは彼の説が支配的でした。その後、変成作用は図1のようにさまざまな温度・圧力(静水圧)で起る再結晶作用であり、ズレ応力の有無によって変成岩(の鉱物組合せ)の種類が変わるとした命名は誤りであることが分かりました。しかし今でも「(火山ではない)褶曲山脈=偏圧(ズレ応力)によってできた=動力変成作用」といった誤った説明を見うけるので、注意が必要です。
 もちろん地層の激しい褶曲や顕著な面構造からして、変成作用の最中に強いズレ応力(剪断ストレス)が作用していたのは確かです。ただ、変成作用の第1の分類基準はまず温度と圧力(静水圧)である、と理解してください。結晶成長に対するズレ応力の役割や、変成岩組織から変成帯のうけた応力を復元するなどの先端的研究は近年盛んになってきました。また局所的な破壊・変形をうけた変成岩(カタクラサイト、マイロナイトなど)を動力変成岩と総称することがあります。

【*2】 図2の矢印は、個々の変成岩がたどった温度・圧力の履歴を表しているわけではありません。あくまで、地表に表れた変成帯各地の温度圧力を順に結んだ線です。一方、個々の変成岩がたどった温度・圧力の履歴も近年分かるようになってきました。地表の堆積岩が地下で変成作用を被り、再び地表に姿を現すまでには、さまざまな温度・圧力履歴があり、造山運動を考える大切なデータになっています。


作成2002年1月 最終更新2002年11月