ホーム/目次/第3章 熱い岩石の星・地球
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サブテーマ(解説) 造岩鉱物
/分別結晶作用
岩石をつくる鉱物を造岩鉱物と言います。その中でもマグマから結晶して、火成岩をつくる鉱物たちが重要です。その代表としてカンラン石の結晶構造を見てみましょう。カンラン石は上部マントルの主要構成物であり、地表の岩石にも普通に見られる鉱物です。カンラン石では写真1のように、4種の原子(Mg、Fe、Si、O)がぎっしりと並んでいます。これらの中で1個のSi原子と4個のO原子は強く結合してSiO4四面体をつくっています。SiとOの結合は共有結合とイオン結合の中間的な性質のものです。そして、このSiO4四面体のすき間を埋めるようにMg2+とFe2+が並びます。これらは、いわばSiO4四面体どうしの接着剤のような役目を果たしています。
Mg2+とFe2+の入るすき間はどれも同じような大きさなので、Mg2+とFe2+のどちらが入ることも可能です。極端な例としてMg2+のみ、Fe2+のみも可能です。このように同じカンラン石でもその化学組成は連続的に変化し、化学組成式(Mg、Fe)2SiO4のカッコ内(Mg、Fe)は両者が連続的に置換可能であることを表しています。一般に同じような大きさのすき間には性格の似たイオン(特にイオン半径が似ている)が入ることが可能なため、鉱物の化学組成は連続的に変化する場合がふつうで、このような固体を固溶体(溶液のような固体)と言います。
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写真1 カンラン石(Mg、Fe)2SiO4の結晶構造模型 白→O2−、黄→Si4+、赤・青→Mg2+、Fe2+ カンラン石は密度の大きい鉱物であり、原子(イオン)の詰め込み(パッキング)は密である。 |
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写真2 写真1左側部分をほぐして見やすく置いた様子 SiO4四面体を基本とし、そのすき間にMg2+とFe2+が入る。(SiO4)4−をMg2+やFe2+がつないでいた様子が分かる。SiO4四面体は造岩鉱物に共通で、骨格のような役割を果たす。単位ユニットあたりの原子比は(Mg、Fe)=2、Si=1、O=4となることから、カンラン石の化学組成式は(Mg、Fe)2SiO4となる。 |
カンラン石の場合は1個1個のSiO4四面体がそのまま並んでいましたが、隣り合うSiO4四面体の間で頂点のOを共有する形で並ぶ場合もあります。その結果、SiO4四面体は鎖状に長く並んだり、面的にひろがったり、3次元的なネットワーク状をなしたりします。実はこのSiO4四面体のつながり方の違いが造岩鉱物の種類の違いに対応します。いずれの場合もつながったSiO4四面体は鉱物の骨組みのような役割を果たします。
骨組みであるSiO4四面体のつながり方次第で、O原子間にできるすき間の広さも決まります。このすき間は取り囲むOの数により3種類あり、その広さは8個>6個>4個です。一方、これらのすき間に入る主な金属イオンの大きさはK+>Ca2+、Na+>Fe2+>Mg2+、Fe3+>Al3+>Si4+であり、それぞれ一番得意なすき間に入ります。このような事情により、造岩鉱物は次の6グループに大別でき、(石英を除き)幅広い置換範囲を持つ固溶体をなします。
| 各グループの代表的な造岩鉱物 | SiO4四面体のつながり方 | 化学組成 | |
| カンラン石 | 孤立 | (Mg,Fe)2SiO4 | Mg、Feを含む 有色鉱物 |
| 輝石(単斜輝石、斜方輝石) | 鎖状 | 斜方輝石(Mg,Fe)SiO3 単斜輝石(Ca、Mg,Fe)Si2O6 |
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| 角閃石(ホルンブレンドなど) | 2重の鎖状 | Na0〜1Ca2(Mg,Fe,Al)5(Al,Si)8O22(OH)2 | |
| 雲母(黒雲母、白雲母) | 面状 | K2(Mg,Fe,Al)6〜5(Si,Al)8O20(OH)4 | |
| 長石(斜長石、アルカリ長石) | 3次元 | CaAl2Si2O8(Ca長石)、NaAlSi3O8(Na長石) 、KAlSi3O8(K長石)の3成分からなる固溶体。 Ca−Na系は斜長石、K−Na系はアルカリ長石 |
Mg、Feを含まない 無色鉱物 |
| 石英 | 3次元 | SiO2 | |
| 磁鉄鉱、チタン鉄鉱、赤鉄鉱 | 磁鉄鉱Fe3O4 チタン鉄鉱(イルメナイト)FeTiO3 赤鉄鉱Fe2O3 |
Siを含まない酸化鉱物 (不透明鉱物) |

グラフ 主な造岩鉱物の構成元素(原子数比)*2
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写真3 角閃石の電子顕微鏡写真 白い縞1本1本がSiO4四面体の2重鎖(D)にあたる。一部で特殊な3重鎖(T)が生成しているところ。 (北海道日高帯下川岩体の変成玄武岩に生じたアクチノ閃石、1986年) |
分別結晶作用*1
マグマはマントルで生まれます。この初生マグマは玄武岩マグマであり、地球に一番多い重要なマグマです。その玄武岩マグマが次第に冷めてゆくとき、最初に出現する結晶はカンラン石です。それでは両者の化学組成(原子比)をグラフで比べてみましょう。カンラン石はもともとの玄武岩マグマに比べ、MgFeに富みSiに乏しいことが分かります。そこでカンラン石をはき出したマグマは、その分だけMgFeに乏しくSiに富むことになります。ところがカンラン石はマグマより重い(密度大)ので、結晶すると下へ沈んでゆきます。すると後にはもともとの玄武岩マグマに比べMgFeに乏しくSiに富んだマグマが残されたことになります。玄武岩マグマからはカンラン石に続いて輝石やCa長石も結晶しますので、同じようなしくみで後に残されるマグマの化学組成が変化してゆきます。

このようにして玄武岩マグマから優先的にMg、Fe、Caが取り除かれると、後にはSi、Na、Kに富んだマグマが生まれることになります。これが安山岩マグマ、カコウ岩マグマに相当します。このように鉱物の化学組成と結晶する順序の違いの効果で、最初のマグマが別のマグマに導かれてゆく過程を分別結晶作用(分化作用)と言います。一方、マグマだまりの底には上から落ちてきた鉱物があたかも地層のように堆積して固結します。深成岩にしばしば見られる層状ハンレイ岩やカンラン岩はこのようにしてできました。
月の形成初期には月全体がマグマの海となりました。そこでは逆に結晶した斜長石が表面にプカプカと浮かんで固まり、斜長岩ができました。月の白く輝く「高地」は、このようにしてできた斜長岩(白い!)です。
【*1】 分別結晶作用は多様なマグマを生むプロセスとして教科書でも必ず紹介されています。この過程はアメリカの岩石学者ボーエンが1930年頃、実験と理論の両面から明らかにしました。ボーエン理論はマグマの多様性を初めて科学的に体系化した理論であったので、大いに重視されました。現代においても岩石学の基礎理論として重要なので、高校地学にも登場するのでしょう。しかし、実際に地球上に出現する大量のカコウ岩や安山岩がこのようにしてできたわけではなさそうです。別項で紹介したようにマグマの発生や分化にはさまざまな過程があり、ボーエン理論は限定範囲の中での過程(素過程)の一つです。私自身は、高校で分別結晶を取り上げるなら地学Uで十分と考えてます。もちろんボーエンの偉大な業績は何らあせることはありません。
【*2】 岩石や鉱物の化学組成はふつうSiO2、Al2O3・・・と酸化物の形で表しますが、SiO2という集まり(分子など)が実体としてあるわけではありません。単に表記上の便宜です。私はSi、Al・・・と各元素にばらした方が分かりやすいと思います。また実際の数字には質量比、体積比、モル比(数の比)があります。ここでは後鉱物の化学組成式に対応させ、モル比で説明しました。ちなみに体積比で見ると、写真1のように、鉱物岩石のほとんどは酸素が占めていることが分かります(イオン半径を占有体積と見なせば)。