ホーム/目次/第3章 熱い岩石の星・地球
火山/マグマ/鉱物と岩石/地震/地球内部を探る/プレートテクトニクス/大陸移動と造山運動
パンゲア超大陸の分裂
大西洋をはさんだ両側の大陸の形が、ちょうどパズルのようにピッタリ合うことは昔から知られていました。これは単なる偶然なのでしょうか。永らく科学上の謎だったこの問題をプレートテクトニクスは鮮やかに解決しました。両者はもともと一つの巨大な大陸(パンゲア超大陸)であり、2億年前頃から巨大な割れ目ができ、引き裂かれるように分裂したのです。分裂が起きたところは現在の海嶺(大西洋中央海嶺)にあたり、分裂は現在も進行中です。
このような大陸の分裂が現在始まりつつあるところところがアフリカ大陸東部の大地溝帯です。そこでは南北数千kmにわたり大陸が引き裂かれ、陥没地形(地溝)ができ、アフリカ最高峰キリンマンジャロをはじめ多数の火山が連なります。将来、アフリカ大陸は本体と東部に分裂してゆくでしょう。
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図1 拡大前の大西洋=パンゲア超大陸 大西洋の両岸の形の類似は、プレートテクトニクスの前身であるウェゲナーの大陸移動説の着想のきっかけにもなった。一度は忘れ去られた大陸移動説はプレートテクトニクスにより復活した。超大陸パンゲアは約2億年前頃から分裂、拡大を始め、現在も大西洋中央海嶺は拡大中である。 |
海洋プレートの拡大−海嶺
海嶺はまさに海洋プレートが生まれるところであり、地球最大の活発な火山帯にあたりますが、その大部分は深海底にあり、長い間気づかれずにきました。戦後、船上からの地形や地磁気調査により注目され、海洋底拡大説(プレートテクトニクスの発端)とともに脚光を浴びました。海嶺は長大な海底火山山脈ですが、ヒマラヤ山脈のような険しい山脈があるわけではありません(陸上の険しい山脈は侵食作用によるものです)。山脈と言うよりは、大きなふくらみと言った地形であり、「海膨」と言うこともあります。両側への拡大により頂上部は陥没して谷形になっています。そこには割れ目から噴出してニョロニョロと流れた枕状溶岩(玄武岩)が見られます。また、しみ込んだ海水が地下のマグマだまりで熱せられ、高温の熱水として再び海底に噴き出しているところも発見されています。これらの熱水噴出口の付近にはしばしば生物群集が見られ、独自の生態系をなしているようです。最近では35億年前、このような熱水噴出口で生命が誕生したという意見が有力です。
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| 写真1 海嶺拡大軸の枕状溶岩 粘り気の小さい玄武岩溶岩が水中に噴出すると、このような独特な「西洋枕」状の形になる。 |
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写真2 熱水噴出の様子 煙突状の噴出口から重金属の粒子を含む黒煙のような熱水(350℃)が噴出している。ブラックスモーカーという愛称がある。 |
| 写真3 熱水噴出口の生物群集 不思議な生き物(チューブワーム)が発見された。後方に2枚貝や白いカニが見える。化学合成細菌を生産者とする独立した生態系をつくっているらしい。 |
写真1〜3はK.C.マクドナルド&D.P.ルーウェンダイク(1981)、Scientific
Americanより |
海嶺の地下には高温のマントル(カンラン岩)が上昇してきて融けかかり(部分融解)、玄武岩マグマが発生しています。地表の7割を占める海洋地殻の膨大な玄武岩は、このように海嶺で生まれたものです。海洋地殻の下では玄武岩をはき出した後の「出涸らしマントル」が冷たく硬くなり、海洋プレートとなってゆきます。海洋プレートは両側へ拡大するにつれ次第に冷えてゆくので、この硬い部分が下に向かって厚くなっていきます。つまり海洋プレートは時間とともに次第に下へ厚くなっていき、十分に冷えると厚さ100kmほどになります。
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図2 海嶺地下の様子 海嶺下では、高温のマントルの部分融解により玄武岩マグマが発生し、海嶺直下に集まってマグマだまりをつくる。マグマは海底に噴出し枕状溶岩になったり、マグマだまりでそのまま固結して層状ハンレイ岩になったりする。このようにして新しい海洋地殻ができる。部分溶融による液体を失った出涸らしマントルは、やがて冷えて硬くなり、プレートの一部になる。このようにして、プレートは次第に下に向かって厚くなる。 海嶺は深海底であり直接の探査は難しいので、陸上に見られるオフィオライト(化石海嶺)の調査も重要になる。 |
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写真4 アイスランドの玄武岩 アイスランドは大西洋中央海嶺が海面上に姿を現している貴重な島。島全体が引き裂かれる、長大な割れ目(ギャオ)や玄武岩火山の活動が盛ん。写真はカンラン石の斑晶を多数含む玄武岩。(千葉県高校地学教諭・T氏提供) |
海洋プレートのもぐり込み−島弧
海嶺で生まれた海洋プレートはやがて海溝から再び地球深部に戻ってゆきます。この海洋プレートのもぐり込みによりできるのが島弧であり、日本列島は典型的な島弧であることをすでに説明してきました。ここでは改めて日本列島を例に、島弧の特徴を表す図を列挙してみます。島弧(日本列島)に見られる様々な特徴は海洋プレートのもぐり込みという観点から統一的に解釈できます。このようなことは1970年代以降、プレートテクトニクスの登場により初めてできるようになりました。
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図3 日本列島の概略 日本列島は北米プレートとユーラシアプレートの下に太平洋プレートとフィリピン海プレートがもぐり込むところにできた島弧である。何と4枚のプレートが登場する。 太平洋プレートは日本海溝〜伊豆小笠原海溝から地下600kmという深部へもぐり込んでいる。フィリピン海プレートは南海トラフ(海溝)〜琉球海溝から地下250kmへもぐり込む。海溝の存在、火山帯の形、大陸側へ傾く深発地震面など島弧に関する様々な特徴は、海洋プレートのもぐり込みの結果として統一的に解釈できる。 |
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図4 3種類の地震 1)深発地震はもぐり込む海洋プレートそのものの破壊 2)海溝型巨大地震は引きずり込まれた陸側のハネ上がり 3)内陸の浅発地震(直下型地震)は圧縮による地殻の破壊。次図の活断層はその現れ |
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図5 日本の活断層 図は代表的なもののみ示した。日本列島は太平洋プレート、フィリピン海プレートのもぐり込みにより絶えず東西圧縮をうけ、地殻の変形・破壊(内陸の浅発地震)が進行する。それが地表に現れたのが活断層である。南北アルプスをはじめ全国に見られる険しい山地は、このような力により第四紀以降急速に隆起してできた。ちなみに海水を取り除けば、日本列島全体をヒマラヤ山脈やアンデス山脈のような大山脈と見なすこともできる。 |
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図6 海溝に並行する火山帯 島弧マグマの成因には未だ議論があるが、もぐり込んだ海洋プレートから浸み出した水の影響が大きいという。これがもとで海溝に並行した弧状の火山帯(火山弧)ができる。マグマは安山岩をはじめ変化に富み、成層火山やカルデラ火山が多いのが特徴。 |
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図7 最新の観測による地下断面 冷たい海洋プレート(青)のもぐり込みと3種類の震源が分かる。島弧地下には高温の部分(黄〜赤)があり、ここでマグマが発生しているかも知れない。 愛媛大学・地球深部ダイナミクス研究センター・深版地底旅行より http://www.ehime-u.ac.jp/~grc/ |
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図8 2種類の変成作用 海溝内側には海洋プレート上の物質が付加する(付加体)。その先には1)低温高圧型の変成作用が起こり、付加した物質が結晶片岩になる。島弧火山帯(火山弧)の地下ではカコウ岩や2)高温低圧型の変成岩ができる。 |
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図9 付加体として成長した日本列島 図は西南日本の地質帯が太平洋側へ向かって帯状配列している様子を表す。いずれの地質帯もかつての付加体である。付加体とは海底玄武岩や深海底チャート、火山島、石灰岩など海洋プレート起源の物質と、陸側からもたらされた砕屑物(泥岩砂岩)が海溝内側で混合して成長したもの。このような出来事が古生代以来、数億年間続き、次第に大洋側へと成長してできたのが日本列島である。付加体は現在も西南日本沖で成長中である。ときには大きな陸地(伊豆)が衝突・合体することもある。 1980年頃まで、日本列島は何回かの造山運動によりできたとされてきたが、微化石(チャート中の放散虫など)の研究から付加体形成の年代が分かり、日本列島形成史は完全に書き換えられた。現在だけでなく過去においても海洋プレートのもぐり込みが本質的であったことが分かった。 |
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図10 もぐり込んだプレートの行方 近年の地震波トモグラフィーによれば、もぐり込んだ冷たい太平洋プレート(スラブ)は、その先のアジア大陸下500km前後に冷たい固まり(青)として滞留しているように見える。そのはるか下、核の上にある冷たい固まりは、滞留していたスラブが崩落したものかも知れないと言う。そうだとすると太平洋プレートのもぐり込みはマントル全体の対流の下降部にあたる。 愛媛大学・地球深部ダイナミクス研究センター・新版地底旅行より http://www.ehime-u.ac.jp/~grc/ |
サブテーマ 変成岩と変成帯
大陸の衝突
プレート運動によって大陸が分裂し、離ればなれになるところがあるならば、逆に大陸どうしが接近し衝突してしまうところもあるはずです。例えば、インド小大陸は赤道はるか南から北上して、ついにユーラシア大陸に衝突してしまいました。両者の間に堆積した地層は、両大陸にはさまれて激しく褶曲、隆起し、現在では世界一の大山脈(ヒマラヤ山脈)になっています。アルプス山脈も同じようにユーラシアプレート(ヨーロッパ)にアフリカが衝突してできました。山脈ができることを造山運動と呼びますが、その原因はプレート運動です。
作成2002年1月 最終更新2002年11月