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ホーム目次第3章 熱い岩石の星・地球
火山マグマ鉱物と岩石地震地球内部を探る/プレートテクトニクス/大陸移動と造山運動


プレートテクトニクス
 前節では、日本列島の地下に海溝からプレートがもぐり込み、深発地震の原因になっていることを説明しました。今度は世界の震源分布を見てみましょう(図1)。地震も火山と同じようにある限られた地域(地震帯)で起きていることが分かります。しかし地震帯の中には、日本と同じように深発地震の起こるところ(図2)と、起こらないところがあります。この2つの区分に沿って考えていきます。
 環太平洋〜インドネシアの地震帯は、日本と同じように斜めの深発地震面を伴う地震帯であり、そこでは海洋プレートがもぐり込んでいると考えられます。そのため海洋プレートがもぐり始めるところにできる地形(海溝)が地震帯に並行しています。これらの地帯はまた火山帯でもあり、弧を描く火山列島が連なっています。実は深発地震、海溝、弧状の火山列島と言った一見無関係にみえる出来事は、海洋プレートのもぐり込みという一つの出来事のさまざまな結果であるわけです。このような地帯を島弧(島弧−海溝系)と呼び、日本列島はその典型です。なおアンデス山脈のように、島ではなく大陸の部分もありますが、基本的には同じものと考えて良いでしょう。島弧の火山帯は海洋プレートのもぐり込みにより起きている現象ですが、そのしくみはかなり複雑なので、サブテーマで紹介します。
 一方、地球には深発地震や海溝を伴わない地震帯が大洋の中央部に延々と連なっています(図1)。そこで起こる浅発地震は地殻が両側へ引っ張られ陥没する動きにあたるものです。実はこの2番目のタイプの地震帯では、海洋プレートが割れて両側に拡大していることが分かってきました。できた割れ目を埋めるように地下からマグマがやってきて、一部は海底にあふれ出すので、この割れ目は数万kmも連なる海底火山山脈になっています。このようなところを海嶺(大洋中央海嶺)と呼びます。海嶺は海洋プレートが新たに生まれるところです。南米沖の海嶺で生まれた海洋プレート(太平洋プレート)は1億年以上の時間をかけて北西に移動し、日本海溝などからアジア大陸の下に斜めにもぐり込んでゆきます。海嶺がプレートの誕生地だとすれば、海溝はプレートの墓場と言えるでしょう。

図1 地震帯(震源の深さ100km以下の浅い地震のみ)
 環太平洋、インドネシア、ヒマラヤ〜地中海、大西洋、インド洋、太平洋東部などに地震帯が連なる。(M4以上、1970〜1985)
図2 深発地震(深さ100km以上)
 左図のうち、深発地震が起きているのは環太平洋、インドネシア、ヒマラヤ〜地中海の一部のみである。(M4以上、1970〜1985)

 以上の話をまとめると、地震帯とはプレートどうしの境界であり、2タイプの地震帯はそれぞれ海洋プレートが生まれるところと、再び地球深部へもぐり込んで行くところに相当すると言うことです。つけ加えれば、2枚のプレートどうしが横にズレ合う地震帯があることも分かってきました。そのような目で世界地図を見ると、地球の表面は大きな7枚のプレートからできていて、おのおのが(1)開いたり、(2)閉じたり、(3)横にズレたりしながら、地球の表面を水平移動していることが分かります。このように「地球の表面は数枚のプレートからできていて、おのおののプレートが水平移動している」とする考え方をプレートテクトニクスと呼びます。テクトニクスというのは地球の大きな構造のでき方と言う意味です。

図3 3種類のプレート境界
(1)プレートが開くところ=海嶺(大洋中央海嶺)
 海洋プレートが生まれるところ。プレートが拡大してできたすき間を埋めるように、マントルからマグマが上昇して新しく海洋プレートができる。
(2)プレートが閉じるところ=島弧(島弧−海溝系)
 海洋プレートがもう片方のプレートの下にもぐり込むところ。深発地震帯にあたる。大陸どうしが衝突する場合もある。
(3)プレートが横にズレるところ=トランスフォーム断層*1
 北アメリカと太平洋の境界(サンアンドレアス断層)など
図4 地震帯とプレート配置
 地震帯はプレートの境界である。大きなプレートが7枚ある。小さなプレートも数枚見られる(名前省略)。太平洋プレートのように海洋のみからなるプレートもあれば、海洋と大陸の両者を含むプレートもある。

 細長い帯状の地域で起きている地震、火山、造山運動などの地殻変動は永らく地球科学上の大テーマでした。プレートテクトニクスの目で見ると、実はそれらの地帯はいずれもプレート境界にあたるところだったのです。そこでは(1)開く、(2)閉じる、(3)横にズレる、の3種類のプレート運動に応じた変動が起きています。プレートテクトニクスは1980年頃完成し、現在では地球科学の標準理論として受け入れられています。これにより初めて地球を総合的に研究することができるようになりました。
サブテーマ 大陸移動説からプレートテクトニクスへ

地殻とプレートの違い

 地殻とプレートは混同しやすいので注意してください。どちらも地球表層部に対する命名なのですが、指しているものは異なります。モホ面より上の玄武岩やカコウ岩の部分が地殻、それより下のカンラン岩の部分ががマントルです。つまり地殻とマントルは岩石の種類の違いです。地殻の厚さは海洋地殻=7km、大陸地殻約30kmと非常に薄いものです。
 これに対し、地下約100kmまでの硬い岩石の板がプレート(リソスフェア)で、表層の地殻とその下の硬いマントル(カンラン岩)の両者からできています。このプレートが、マントル(カンラン岩)の軟らかくなったところの上を動いているという考えが、プレートテクトニクスです。軟らかくなったマントルをアセノスフェアと言います。プレートとアセノスフェアの違いは硬さ(流れやすさ)の違いです。なお「リソスフェア」は「アセノスフェア」と対になった言い方で、垂直区分による命名ですが、指しているものはプレートと同じです。また沈み込んでいる海洋プレートを「スラブ」という時があります。
 地殻/マントルにしろ、プレート/アセノスフェアにしろ、全て地震波による観測から推定したものです。このように似て非なる名称が混在していては間違いやすいと思いますが、当面は仕方がありません。地殻−マントルという分け方には歴史があり、すっかり定着しています。一方、地球を語るのにプレートに触れないわけにもいきません。*2

図5 地球表層部の模式断面図
 地殻/マントル(緑)は物質(岩石)の種類の違い、いわば化学的区分。これに対し、リソスフェア(プレート)/アセノスフェアは流れやすさ(粘性)の違い、いわば力学的区分。リソスフェアとプレートはほぼ同じものを指すが、垂直断面で見た領域として見るときは「アセノスフェア」、水平的な広がりを持った何枚かの板として見るときは「プレート」と言う。アセノスフェアは地震波の速度がやや遅くなるところ(低速度層)で、マントルが高温のため軟らかくなっているらしい。地殻とプレートは似たようなものと思われがちだが、ずいぶん厚さが違う。

実習 スライムで見るマントル対流

プレート運動とホットスポット
 海洋プレートの水平移動を理解するのにちょうど良いのがハワイ島です。ハワイ島は現在も活動中の火山島です。ハワイ島の北北西−北西には活動を終えた火山島や海山が点々と連なっていて、その活動時期はハワイ島から遠いものほど古くなります。ハワイ島の位置を定点とし、そこでできた火山を太平洋プレートがベルトコンベアーのように次々と北西に運んで行ったと考えられます。各島のハワイ島からの距離と活動していた時代から、太平洋プレートは約8cm/年の速さで北北西に移動してきたことが分かります。ハワイのような定点火山をホットスポットと呼び、マントル深部の同じ場所でマグマが発生し続けているものと考えられます。*3

図6 ハワイ島(ホットスポット)から連なる火山列
 マントル深部に固定されたマグマ発生点(ホットスポット)が、西北西に移動する太平洋プレートの上に次々と火山を作ったため、活動を止めた火山島〜海山(海底火山)が一列に並んだ。雄略海山のあたりで列の方向が変わっていることから、この時期に太平洋プレートの運動方向が北北西から西北西に変わったことが分かる。
図7 ハワイ島から連なる海山列の年代−距離の関係
 図6の各火山島の活動年代とハワイ島の距離は見事な比例関係を示す。グラフから太平洋プレートの移動速度は約80km/百万年=8cm/年と分かる。

プレート運動の原動力
 プレートが動く原因は、マントル(地殻を含む)の大きな対流と考えられます。地球は誕生直後にマグマオーシャンになった時の膨大な熱を、今でも内部に持っていて、そのためマントルは固体でありながらゆっくりと大きく対流しています。これがマントル対流です。つまり誕生当時の熱エネルギーを少しずつ失って、地球が冷めてゆくプロセス(対流)が地表に現れたのが、プレート運動であり、火山であり、地震であると考えられます。この点では、熱いスープが少しずつ冷めてゆくのと同じです。
 ただし古典的なマントル対流像と、現在のそれは大分異なるので注意してください。プレートテクトニクスの創生期には、マントル対流の湧き出し口が海嶺であり、プレートはマントル対流の上に乗って、あたかも川の上のイカダの如く流れるものと想像されました。現在でもこのような説明を見受けますが、今や完全に誤りです。海嶺はマントル対流の湧き出し口というわけではなく、海洋プレートが移動するのはむしろ机から滑り落ちるテーブルクロスのように自らの重さで沈み込んでいるためであり、従って海嶺は受動的に割れて開いているところが多いようです。マントル対流の形は地震波トモグラフィーという手法を用いて近年急速に分かってきました。それによるとマントル対流の湧き出しは、ちょうどキノコのような形をしていて、プルームと呼ばれています。同じ器(地球)の中の対流でも、冷えて硬くなった表面は板状の水平移動(プレート運動)となり、高温で流れやすい深部はプルーム状の形をとるのでしょう。マントル対流の実像とプレート運動の関係は、これから明らかになってくるでしょう。

   


【*1】 トランスフォーム断層・・・開くプレート境界Rと閉じるプレート境界Tに対し、R-R、T−T、R−Tをつなぐ境界にあたります。プレートどうしが横にズレ合う境界と考えて良いでしょう。実は細かく見ると海嶺はトランスフォーム断層により切れぎれになっています(図3)。陸上の例として太平洋プレートと北米プレートの境界にあたるサンアンドレアス断層が有名。
【*2】 地殻とプレートを混同した誤りは、普及書や教養番組などでもしばしば見られます。結果的に大きな間違いを起こすこともなく、私自身ですら授業であいまいにして済ますこともありますが、できればきちんと把握して欲しい。将来的に整理するとしたら、地殻をやめて、プレートを残すでしょうか・・・。

【*3】初期の頃はプレート運動の証拠として、また運動方向復元の定点として、ホットスポットはしばしば取り上げられてきました。しかし、ホットスポットがなぜそこにあるのか、現在でもはっきりとは分かっていないようです。最近では核から上昇してきた高温のプルームに起源を求める説もあります。今後もホットスポットは注目されそうです。

作成2002年1月 最終更新2002年11月