ホーム/目次/第3章 熱い岩石の星・地球
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地震波で地球内部を探る
波が伝わるとき、伝える物質が異なると波の速さが異なります。波が物質の境界を越えて伝わるときには、境界で波の速さが変わってしまうことが原因で、波の伝わる方向が折れ曲がるという現象が起きます。これを波の屈折と言います。例えばガラスと空気では光の速さが異なるので、ガラスと空気の境界で光は屈折します。これを利用したのがレンズです。水と空気の境界(水面)で光が屈折するのも同じです。
実習 波の速さの違いと屈折の方向を作図する
地震波の屈折を利用して、地球の内部を探ることができます。人間が掘ることのできる穴(ボーリングなど)はせいぜい深さ10kmで、地球深部を直接探ることは不可能です。実は地震波による間接的な推定が、地球内部を探る唯一とも言える手がかりです。モホロビチッチは、地下で屈折したP波が先に到着し、最短距離を伝わってきたP波が遅れて到着するという事実を発見しました(1909年)。そこで彼は地下30kmに地震波の速さが速くなる境界面があり、そこで屈折した地震波が先に到着するのだと推定しました。この面をモホロビチッチ不連続面(モホ面)と呼び、そこより上を地殻、下をマントルと呼びます。現在では地殻はカコウ岩や玄武岩から、マントルはカンラン岩からできていると考えられています。さらに地殻は、厚さ数kmと薄く玄武岩のみでできた海洋地殻と、厚さ約30km(場所により違いが大きい)と厚く上部はカコウ岩、下部は玄武岩からなる大陸地殻とに分けられます。地表は大きく海洋と大陸に分けられますが、これはたまたま高いところ低いところではなく、地殻の種類が大きく異なるわけです。
さらに地震計が進歩すると、P波が地球全体に伝わってゆく様子が分かってきました。すると地球の裏側にはP波が伝わるのに、斜め裏側には影のように伝わらない場所(シャドーゾーン)があることが分かりました。このことから、図4のように地球の中心部(2900km以深)には核があると推定されます。核は主に鉄でできていると推定されています。さらに核はS波を伝えない(すなわち液体の)外核と、固体の内核(5100km以深)からなると考えられます。惑星内部が岩石マントルと金属核からできているという点は、地球型惑星に共通する特徴です。
地震波による地球内部の探査はその後も進歩し、近年では地球のCTスキャンとも言える新技術・地震波トモグラフィーによりマントルの様子が詳しく分ってきました。*1
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| 図4 核によるP波の屈折でできるシャドーゾーン | 写真2 シャドーゾーンのモデル実験 地震波(レーザー光線)が核(アクリル円盤)で屈折して、地球の斜め裏側には届かない。 |
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図5 地球内部の断面図 地球内部は「半熟ゆで卵」のように地殻・マントル・核からなる。核は外核(液体・S波を通さない)と内核(固体)に分かれる。 地殻は図では厚さが強調されているが、本当は数km〜数十kmと薄い。 表層部拡大図 |
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| 図6 1ヶ月の地震 関東・中部地方2002.10.10〜11.08(30日間)の震央分布 東京大学地震研究所より http://eoc.eri.u-tokyo.ac.jp/harvest/eqmap/tkyMAP30.html |
図7 日本列島の深発地震の深さ 海溝から大陸側へ向かって、震源の深さが500km以深へと深くなる(赤→青)ことが分かる。ただし着色した等深線は模式的なもの。 |
日本列島では微小地震まで含めると、四六時中地震が起きています(図6)。これらの地震には、地下約20kmまでの比較的浅いところで起きるもの(浅発地震)と、もっと深いところ(〜数百km)で起きるもの(深発地震)があります。ここでは深発地震の震源の深さを立体的に見てみましょう。すると日本列島付近の深発地震源は海溝から大陸側へ向けて徐々に深くなり、日本海西部ではついに地下500km以深に達します(図7)。このように深発地震源が集中する、海溝から斜め下に向かう面状の領域を深発地震面と言います。日本の地震学者・和達清夫らが発見したので、和達−ベニオフ面とも言います。なぜ深発地震源がこのような斜めの面に集中するのか、地学の永年の謎でしたが、その理由が分かってきました。
すでに学んだように、地震とは硬い岩石が力をうけて破壊するときの震動です。ところが地下数100kmの深さではマントル(カンラン岩)は高温のため軟らかみを帯びてしまうため、地震になるような割れ方をしないはずです。そこで大洋の底をなしている厚さ100kmほどの岩板が、海溝から斜め下に向かってもぐり込み深発地震源になっていると考えられます。この岩板は海底で冷たくなっていたため、硬く割れやすい(バキッ!と割れる)と予想されるからです。このような岩板をプレートと呼び、特に太平洋のような大洋の底をつくる岩板を海洋プレートと呼びます。日本付近で言うと、日本海溝〜伊豆小笠原海溝から太平洋プレートがもぐり込み、南海トラフ(海溝)〜琉球海溝からフィリピン海プレートがもぐり込んでいます。
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図8 震源の地下断面とP波速度異常(温度分布) P波が速いところ(青)は温度が低いところと考えられる。東北地方の下に冷たい太平洋プレートが斜めにもぐり込み、そこが深発地震源になっている様子がみてとれる。 愛媛大学・地球深部ダイナミクス研究センター・深版地底旅行より http://www.ehime-u.ac.jp/~grc/ |
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図9 日本列島の地下断面図 日本列島の地下を「もぐり込む海洋プレート」という考え方でまとめた図。 深発地震はもぐり込む海洋プレートそのものの破壊、海溝型巨大地震は引きずり込まれた陸側のハネ上がり、内陸型浅発地震(直下型地震)は圧縮による地殻の破壊により起こる。 |
海洋プレートは年に数cmの速さで日本列島の下にもぐり込んでいます。海溝の大陸側(日本側)は、この動きに引きずり込まれてゆきますが、時々反発してハネ上がり元に戻ります。このハネ上がるときの震動が巨大な地震となります。海底が大きくハネ上がるので、津波の原因にもなります。このような地震を海溝型巨大地震(プレート境界型地震)と言い、大変危険な地震です。1923年の関東地震(関東大震災)や心配されている東海地震はこのタイプです。
日本列島本体は、押し寄せてくる海洋プレートと、後ろに控えるアジア大陸の間で板挟みになり、東西に圧縮する力を常にうけています。このため日本列島の地殻をつくる岩石は絶えず変形と破壊を起こしています。このようにして浅いところで起こる地震が内陸型浅発地震です。しばしば私たちの暮らす土地の直ぐ下で起こる(直下型地震)ので、マグニチュードはそれほど大きくなくても、災害に結びつきやすい特徴があります。1995年の兵庫県南部地震(阪神大震災)をはじめ、内陸を震源とする震災はこのタイプです。
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図10 地震波トモグラフィーで見た日本列島付近の地下 海溝からもぐり込んだ冷たい太平洋プレート(スラブ)に沿ってのみ深発地震が起きている。スラブはその先、アジア大陸の地下500km前後に冷たい固まり(青)として滞留しているように見える。そのはるか下、核の上にある冷たい固まりは、滞留していたスラブが崩落したものかも知れないと言う。 愛媛大学・地球深部ダイナミクス研究センター・新版地底旅行より http://www.ehime-u.ac.jp/~grc/ |
関連サイト
| 愛媛大学・地球深部ダイナミクス研究センター http://www.ehime-u.ac.jp/~grc/ |
高圧実験によるマントル物質研究の第1人者、入舩徹男氏による連載・新版地底旅行があります。 |
作成2002年1月 最終更新2002年11月