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ホーム目次第3章 熱い岩石の星・地球
火山マグマ鉱物と岩石/地震/地球内部を探るプレートテクトニクス大陸移動と造山運動


振動の伝わり
写真1 おもりにより曲がったガラス管

 ガラスと言えば「硬くてもろい」ものの代表です。ところがガラス管におもりをぶら下げてみると(写真1)、わずかですがガラスはたわんで曲がり、バネのように弾みます。実は、どんなものもバネのように、変形すると元に戻ろうとする性質(弾性)を持っています。弾性を持つ物質は振動を伝え、この振動の伝わりを波(波動)と呼びます。波と言えば、水面の波のように液体を伝わる波を思い浮かべますが、弾性を持つ物質なら何でも(つまりどんな物質でも)波を伝えます。波について考えるときは1)振幅(波の大きさ)、2)波長(波の性質を決める)、3)波の速さ(伝える物質による)の3つに注目します*1。空気や水の中を伝わる音、光や電波*2、地震波などはいずれも波です。

実習 バネ電話(音の正体)

地震の正体
 写真1のガラスにもっと重いおもりを下げれば、ついに変形の限界を越えガラスは破壊します。地震の発生もこれと同じです。地震とは、地下の岩石が力をうけて変形し、ついに破壊したときの振動が地震波として周囲に伝わる現象です。
 破壊(振動)の発生する場所を震源と呼びます。地表で震源の真上にあたる場所を震央と呼びます。破壊とは、具体的には岩石に割れ目ができてズレて動くことです。震源で始まった破壊は瞬く間に大きな面積のズレとなります。このようなズレの起きた割れ目を断層(地震断層)と呼びます。地震断層は突然新しくできるわけではなく、既にあった断層が繰り返しズレて動いています。大きな地震や浅い地震では、地表にもこの断層が姿を現すことがあり、活断層と呼びます。

図1 地震断層
 地震とは、地殻の破壊=断層がズレて動くときの振動が伝わる現象。
 地表に現れた地震断層が活断層。一般に地震断層は繰り返しズレて動くので、活断層は将来の震源であり警戒が必要。ただし活断層にはいろいろなものがあり、どれも同じように危険なわけではない。また地下の地震断層は発見できないので、活断層だけが危険というわけでもない。
図2 震源と震央、震度 *4
 震源から地震波が伝わる様子。遠いところほど揺れ(震度)は小さくなる。震源の真上が震央。
図3 兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)の震度分布
 制定後初めて震度7を記録(狭い帯状地帯なので、図には表れていない)実際には図2のようなきれいな同心円にはならないが、震央から遠いほど震度は小さくなる。

 地震による各地の揺れの大小を震度と呼び、0から7まであります。震度は震源(震央)から遠くに行くほど小さくなります。日常生活の感覚では、この震度の大小=地震の大きさであり、最大震度(震央)が大きいほど大地震ということになります。しかし震度は距離により異なってしまう値ですから、地震の真の大きさを表すためには別の尺度が必要になります。そこで地震の規模そのものを表す値として用いられるのがマグニチュード(M)です。
アルバム 断層を見る

P波とS波
 震源から発する地震波には何種類かがありますが、その代表がP波とS波です。P波は前後方向(進行方向)の震動が伝わるタイプの波(縦波)です。また伝わる速さが速いので最初に到着します。これに対しS波は上下左右(直交方向)の震動が伝わるタイプの波(横波)で、遅いので遅れて到着します。

名前 P波
Primary Wave
S波
Secondary Wave
速さ 速い(約5km/s) 遅い(約3km/s)
振幅 小さい 大きい
到着順 先着(初期微動) 後着(主要動)
波のタイプ 縦波(疎密波)
波の進行方向と振動方向が平行。疎の部分と密な部分が交互に伝わるので、疎密波とも言う
*3
横波
波の進行方向と振動方向が直交する
 
体積変化に対する復元力による波なので、気体・液体・固体ともに伝わる。 ねじれに対する復元力による波なので、固体のみ伝わる。
バネによるモデル実験
感じ方 最初に感じるカタカタとした細かい揺れ 続いて感じるグラグラとした大きな揺れ
図4 P波とS波の距離−時間グラフ
 震源からの距離が大きくなるほど、P波とS波の到着時刻の差=PS時間(赤矢印)も大きくなる。P波=5km/秒と言ってもピンとこないが、10秒で50km(東京−成田)進む速さ。

 地震の際には、まず先着のP波(振幅が小さく、波長は短い)が到着し、数秒後には遅れてS波(震幅が大きく、波長はやや長い波)が到着します。私たちが地震を感じるときの、最初のカタカタ・・・とした細かい揺れ(初期微動)がP波にあたり、続くグラグラ・・・とした大きな揺れ(主要動)がS波にあたります。P波とS波の到着時刻の差はPS時間(初期微動継続時間)と呼ばれます。震源から遠くなるほどP波とS波の差は開く一方なので(図4)、PS時間は震源からの距離に比例することになります。このことを利用して、震源までの距離を求める公式が次の大森公式です。

震源までの距離=7.5×PS時間・・・・・大森公式

  


【*1】

1)振幅・・・振動の触れる幅、波の大きさにあたる。
2)波長・・・波1サイクルの長さ。音なら高さ(ドレミ・・・)、光なら色(赤緑青・・)と、波の性質を決める。
3)速さ・・・波の伝わる速さ
4)振動数・・・1秒間に振動する回数[Hz]
波長×振動数=速さ

【*2】 光や電波(電磁波)は波としての性質を持つ一方、何もない真空の空間を伝わるので、他の波とは異なるものです。
【*3】 「たて波」という呼び方は、たて(上下)方向の振動(図の右側)を思わせますが、そうではありません。波の進行方向と平行な振動(いわば前後波)を「たて波」と言います。体積変化の伝わり、すなわち押されて密に縮まったところと、引きのばされて疎になったところが交互に伝わる波なので、疎密波とも言います。図の右側は「たて揺れ」ですが「横波」です。紛らわしい呼称です。
【*4】 この図は地震波の伝播(同時刻面)と地震波の減衰(震度低下)を合わせて模式的に描いてありますが、実際はもっと複雑です。地下の岩石により地震波の伝わる速さが異なるため、同心円にはなりません。また地震波の減衰は球面(同心円)の広がりによる幾何学的なものだけでなく、岩石による吸収が大きいので地域差が大きくなります。


関連サイトと参考書

気象庁
http://www.jma.go.jp/JMA_HP/jma/index.html
地震の情報、資料など
日本地震学会
http://wwwsoc.nii.ac.jp/ssj/
地震情報やFAQなど。広報紙なゐふるには地震解説の連載記事多数あり。
地震列島日本の謎を探る/日本地質学会
東京書籍(2000)、1500円
地震、火山、第四紀、日本列島地史など入門分野を分かりやすく解説しています。なお今日では比較的広く受け入れられている考え方が紹介されていますが、「日本地質学会公認の定説」というわけではありません。ちなみに科学の世界に「公認の定説」というものはありません。
活断層/松田時彦
岩波新書・赤423(1995)
阪神大震災をきっかけに、内陸の浅発地震(直下型地震)の原因である活断層が大いに注目されるようになりました。本書は第1人者による分かりやすい解説書です。

作成2002年1月 最終更新2002年11月