ホーム/目次/第3章 熱い岩石の星・地球
火山/マグマ/鉱物と岩石/地震/地球内部を探る/プレートテクトニクス/大陸移動と造山運動
火山の噴火
地球内部が熱くエネルギーを秘めていることを実感させる一番良い例は、火山の噴火でしょう。火山は地下から上がってきたマグマが地表近くの「マグマだまり」にたまり、さらにそこから地表に噴火したものです。マグマと溶岩は似たような言葉ですが、マグマは地下でできた融けた岩石(火山ガスを含む)の総称です。これが地表に流れ出したものが溶岩です。
火山の噴火は、ちょうど炭酸飲料のビンの栓を抜いたときと同じです。ビンの栓を抜くと、高圧により液体に溶け込んでいた気体成分が急激に発泡して、体積が増えます。そのため気体は液体もろとも泡となって狭いビンの口から吹き出します。ビンはマグマだまり、口は噴火口、液体はマグマ、発泡した気体はマグマに溶け込んでいた火山ガス(水蒸気や二酸化炭素など)に相当します。発泡が激しいほど、噴火も激しくなります。
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写真1 吹き出す炭酸飲料 炭酸飲料には高圧により多量のCO2が溶け込んでいる。栓を抜くと圧力が下がり、CO2が気化(発泡)して体積が急増し、狭い口から勢いよく吹き出す。 |
マグマが地表に流れ出したものが溶岩(溶岩流)です。噴出したマグマのしぶきが噴石(火山弾)や軽石です。たいてい火山ガスが発泡した穴が無数に見られます。爆発によりマグマが粉々になって粉末状になったものが火山灰です。噴出した高温の火山灰や火山ガスは、周囲の空気を巻き込みながら噴煙となってモクモクと上昇します。このとき噴煙の密度が大きい(重い)と、山腹を勢いよく下ってくる場合があります。これが火砕流で大変危険です。
火山噴出物は、マグマが固まってできるという点では火山岩であり、地表に堆積するという点では堆積岩であるというふうに、両者にまたがる存在です。そのため火山砕屑岩(火砕岩)として独自の分類命名をされています(あまり細かな分類名は気にしないで良いでしょう)。
サブテーマ 火山噴出物
2種類のマグマ−玄武岩と安山岩
火山噴火や火山地形を見るとき、最も大切なポイントはマグマの種類です。マグマは大ざっぱに言って2種類に分けられます。一つ目は玄武岩マグマ(黒タイプ)、もう一つは広い意味の安山岩マグマ(白タイプ)です。*1
| 黒い火山 | 白い火山 |
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| 写真2 伊豆大島三原山 1986年噴火直後の頂上付近。噴出した玄武岩マグマは溶岩流や噴石、軽石(スコリア)としてあたりをおおっている。全体に黒い。 1987年 |
写真3 雲仙岳 山腹は1991年噴火の火砕流堆積物で覆われている。遠景で分かりにくいが、全体に白っぽい。右手前は1792年に爆発(崩壊)した眉山。 2000年 |
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| 写真4 伊豆大島三原山の溶岩 1986年噴火のもの。黒い玄武岩。表面にドロドロと流れた様子が残る。一面の穴は、火山ガスが発泡してできたもの。 |
写真5 雲仙普賢岳の溶岩 噴出年不明。白っぽい流紋岩(デイサイト)。火山ガスの発泡は見られない。 |
写真2は伊豆大島三原山ですが、溶岩も火山そのものも、色が黒いのが特徴です。写真3は雲仙岳(長崎県)で、白っぽいのが特徴です。この黒と白(灰色)の違いが2種類のマグマ(玄武岩と安山岩)の違いです。この違いは単なる見かけの違いにとどまらず、噴火の仕方や火山の形など、その火山の個性を決めるもっとも重要な要素になります。
マグマはケイ素Si、酸素O、その他の金属元素からなりますが、主成分であるSiO2量がマグマの種類を分ける目安になります。SiO2量の少ない(約50%)マグマ(玄武岩マグマ)は、粘り気(粘性)が弱いので流れやすく、また火山ガスも抜けやすいため、噴火は比較的静穏です。災害にはなりますが、死亡事故はあまり起きません。特に粘性の小さなものは、まるで噴水のごとく溶岩を吹き出します。これに対し、SiO2 量の多い(60%〜70%)マグマ(安山岩マグマ〜流紋岩マグマ)は粘り気が強いため火山ガスが抜けにくいので、しばしば破壊的な激しい噴火を起こします。危険な火砕流を発するのもこの火山です。以上の2つのタイプのマグマについてまとめたのが表1です。
| マグマ | 玄武岩マグマ | 安山岩マグマ〜流紋岩マグマ |
| SiO2量 | 50% | 60%〜70% |
| 火山岩(溶岩など) | 玄武岩(黒) | 安山岩(灰色)〜流紋岩(白) |
| マグマの温度 | 高い 1200〜1100℃ |
低い 1000℃〜900℃ |
| 粘り気(粘性) /流れやすさ |
弱い(小) /流れやすい |
強い(大) /流れにくい |
| 火山ガス | 少ない、抜けやすい | 多い、抜けにくい |
| 噴火 | 比較的静穏 (ただしマグマ水蒸気爆発は爆発的) |
爆発的、破壊的 時に山体崩壊、巨大噴火 |
| 噴出物 | 流れやすい溶岩流 噴石、軽石、火山灰 |
流れにくい溶岩流、かたまった溶岩 噴石、軽石、大量の火山灰、火砕流 |
| 火山の形 | 溶岩台地、盾状火山 成層火山、噴石丘 |
成層火山、噴石丘 カルデラ、溶岩ドーム |
![]() 大島三原山、1986年噴火 火口からは噴水のように溶岩のしぶきが飛び、火山灰はあまり見えない。あふれ出した流れやすい溶岩流が山麓へ向かう。 |
![]() 雲仙普賢岳、1991年噴火 惨事を招いた6月の火砕流。流れにくいデイサイト溶岩が山頂にドームを作り、これが崩落して火砕流が発生した。 |
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![]() フィリピン、ピナツボ火山、1991年噴火 近年では非常に大きな噴火。激しい爆発とともに大量の火山灰が噴出した。 |
実習 食塩を融かす、ガラスを融かす(ガラス細工)
実習 マグマをつくる
日本の火山
図1に日本の主な火山を表しました。日本の火山のうち一番多いのは、安山岩の成層火山です。同じ噴火口から噴火を繰り返すうちに噴石や溶岩が地層となってうず高く堆積し、高い山となったものです。カルデラと呼ばれる大きな凹型地形をなす火山も多く知られています。大きなカルデラは、流紋岩質マグマの激しい噴火により、地下のマグマだまりに空洞ができ、火山体が陥没してできたものと考えられます。しばしばカルデラ湖になり、観光地としておなじみです。粘り気の強い流紋岩がほとんど流れずに地表に突き出し、ドーム状の小丘をなしたものもしばしば見られ、溶岩ドームと呼ばれます。
海外には、流れやすい玄武岩溶岩が平べったい形の火山(盾状火山)をつくったり、洪水のようにあふれ出して溶岩原〜溶岩台地となったものなどがありますが、日本ではほとんど見られません。
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図1 日本の火山分布 日本には安山岩の成層火山が最も多い。北海道や九州にはカルデラ火山も多数見られる。関西・中国・四国には活火山はないが、山陰に比較的最近活動した火山がある。 火山帯は、海溝と並行し、特に海溝側の境界線(火山フロント)はハッキリしている。 この火山帯は、次節図1の太平洋西縁に連なる火山帯(島弧)の一部である。島弧では海溝から沈み込んだ海洋プレートから水が絞り出され、その水の作用でマントルにマグマ発生している。 |
図1のように、火山は帯状の狭い地域(火山帯)に出現します。火山帯の形は、並行している海溝と相似形に見えます。火山帯の海溝側の縁は、かなりハッキリした境界線(火山フロント)になっています。このような火山分布の特徴は日本列島に限ったことではなく、陸上の火山帯に共通した特徴です。
【*1】 次節で解説するように、マグマが固まってできた火成岩(火山岩や深成岩)は、伝統的にマグマのSiO2量(有色鉱物量)で3つに分類します。しかし、大ざっぱにマグマ活動の特徴を捉えるには、本節で説明したような2分類の方が分かりやすいように思います。両者の関係を表に示します。
| SiO2量 | 50% | 60% | 70% | ||
| 3分類 | 火山岩 | 玄武岩 | 安山岩 | 流紋岩 | |
| デイサイト | 流紋岩 | ||||
| 深成岩 | ハンレイ岩 | 閃緑岩 | カコウ岩 | ||
| カコウ閃緑岩 | カコウ岩 | ||||
| 2分類 | 火山岩 | 玄武岩 | 広義の安山岩 (安山岩〜デイサイトが多い) |
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| 深成岩 | ハンレイ岩 | 広義のカコウ岩 (カコウ閃緑岩が多い) |
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| 火山 | 黒タイプ 溶岩台地、盾状火山、成層火山 |
白タイプ 成層火山、カルデラ、火砕流 |
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| プレートとの関係 | 海嶺(海洋地殻) 海洋島(ホットスポット) |
島弧(沈み込み帯) 大陸地殻 |
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| マグマ | 本源マグマ (マントルの初生マグマ) |
2次マグマ | |||
関連サイトと参考書
| 日本火山学会 http://hakone.eri.u-tokyo.ac.jp/kazan/jishome/VSJ1.html |
★一般への普及に力を入れたサイト。名物コーナー「火山学者に聞いてみよう」もあり。「学会」がここまでやるのは珍しいのでは・・・。 | |
| 早川由紀夫研究室 http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/Welcome.html |
★フィールド火山学講座や各火山解説など非常に充実したサイト | |
| 静岡大学・小山真人研究室 http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/Welcome.html |
★富士山の詳しい資料を中心に、火山に関する充実したサイト。伊豆大島もあり。 | |
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フィールドガイド日本の火山@〜D/高橋正樹・小林哲夫編 築地書館(1998〜)各2000円 |
火山は温泉や観光地にもなっていて旅行の機会も多いもの。日本の火山の解説として、またフィールド観察のガイドブックとして最適の好著。同社の「日曜の地学シリーズ」の火山版。 |
| 写真で見る火山の自然史/町田洋・白尾元理 東京大学出版会(1998) |
難しい本の多い(?)同社だが、この本は美しく的確な写真と分かりやすい平易な解説の普及書。 | |
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自然景観の読み方1・火山を読む/守屋以智雄 岩波書店(1992)1200円 |
火山の普及書には好著が多いが、この本はいろいろな噴火や火山地形について解説している。 |
| 火山の話/中村一明 岩波新書・黄35(1978) |
火山学の普及書として名高い古典的名著。今読んでも新鮮。 | |
作成2002年1月 最終更新2003年12月