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ホーム目次/第2章 水と大気の星・地球
海水と陸水海の世界海水の動き地球の大気大気の対流水蒸気と雲/天気図/大気の大循環


太陽のめぐみ
 エネルギーはカロリー(cal)やジュール(J)といった単位で表します。エネルギーは光エネルギー、電気エネルギー、化学エネルギー、位置エネルギー、運動エネルギー、熱エネルギーなどさまざまに姿を変えることができますが、どうなろうと1カロリーは1カロリーです。エネルギーは姿を変えても無くなることはありません(エネルギー保存の法則)。それでは第T章で学んでように、水を循環させ地表の姿を大きく変えてゆくエネルギーは、どこから来ているのでしょう。私たちが毎日食べたり使ったりするエネルギーはどこから来ているのでしょう。そのおおもとは太陽のエネルギーです。例外として地球内部のエネルギーと原子力エネルギーがありますが、地表に限れば太陽エネルギーが圧倒的です。
 太陽のエネルギーは光エネルギーとして宇宙空間を伝わり地球までやってきます。このような太陽の光エネルギーを、太陽放射(または日射)と呼びます。太陽から遠くにいくほど太陽放射は弱まり、ちょうど地球の位置での太陽放射は1m あたり約1400Wです。これを太陽定数といいます。この1400W/m のうち、かなりの量は雲に反射されたり、大気に吸収されたりして、地表まで到達するのは(全体としてみると)その約半分ほどです。
 光と言うとふつうは目に見える光を思い浮かべますが、間の目には見えない光もあります。紫外線赤外線がその代表であり、実はX線や電波も光の一種です。目に見える見えないを問わず、広い意味での光を電磁波と言います。人間の目に見える光を特に可視光と呼びます。太陽からはさまざまな電磁波がやってきますが、その中で最も多いのが可視光です。 
 地球が太陽放射を受け取るだけなら、地球は熱くなる一方のはずです。ところが地表の平均気温は15℃に保たれています。これは地球がエネルギーを受け取るだけでなく、同じ量のエネルギーを捨てているからです。実は地球自身は目に見えない赤外線という形でエネルギーを放出しており、これを地球放射と呼びます。ただし可視光が比較的大気を透過しやすいのに比べ、赤外線は大気中の二酸化炭素CO2 に吸収されやすいという性質があります。つまり地球放射はそのままストレートに宇宙へ出て行くことができず、一度大気に吸収されて大気を温め、大気圏上層部から改めて宇宙に逃げてゆく、というプロセスを経ます。このようなしくみを温室効果と呼びます。もし温室効果がない場合、地表は平均−18℃になるはずでが、実際は15℃であり、その差33℃分が温室効果によるものです。地表の平均気温15℃は、このように太陽放射と温室効果の絶妙なバランスの結果です。昨今しばしば環境問題の第一にあげられる地球温暖化とは、人間が二酸化炭素を増やして、温室効果が強まり過ぎてしまうことを心配しているわけです。

図1 地球の熱エネルギー収支
 宇宙、大気、地表のどこで見ても収支はプラスマイナス0になる。
 地球に到達する太陽放射100のうち30は雲や雪面による反射などで宇宙に戻る(この値をアルベドと言う)。地表に到達するのは50。地表からの赤外線放射の大部分は大気(CO)に吸収され再び地表に戻る。このしくみ(温室効果)により大気は暖められる。地表から出て行く熱の中では、水蒸気の潜熱として上空に移動する熱(20)が最も多い。

総合テーマ・二酸化炭素と地球・・・地球の気温と二酸化炭素

実習 日射計で太陽放射を計る

寒気と暖気の対流
 温度の異なる大気があると、寒気は重い(密度が大きい)ため下へ、暖気は軽い(密度が小さい)ため上へ行こうとして、大気の運動(すなわち対流)が起こります。大気が運動(対流)するということは、簡単に言うと風が吹くと言うことです。それでは大気のかわりに水を使って、対流がどのように起きるか見てみましょう。

写真1・・・成層圏
 下に青インクで着色した冷水(重い)、上に温水(軽い)とすると、その状態が安定に保たれる。
写真2・・・対流圏
 写真1を下から熱すると、下の青い水が軽くなり、不安定になる。ついに青い水が上昇を始め、対流が起こる。下層が暖かいほど(上空が冷たいほど)、激しい上昇が起こる。
写真3 左右の温度差による対流
 左側の冷水(寒気)が下にもぐり込み、右側の温水(暖気)が上に乗り上げるように対流が起こる。
 海陸風、前線、大気大循環など、大気のさまざまなスケールの対流を表す基本的なモデルである。

 まず上下の温度差を考えます。写真1のように、上が暖かく(軽く)下が冷たい(重い)場合は、安定で上下方向の対流は起こりません。これは成層圏に相当します。成層圏ではオゾン層が紫外線を吸収して発熱しているので、大気は上から暖められることになります。そこで写真1のように成層圏の大気は安定して(成層して)いて、上下方向の対流はほとんど起こりません。
 一方、写真2のように、その逆になると不安定で対流が起こります。前項で述べたように、太陽放射を受けとって暖まった地表は地球放射(赤外線)という形で熱エネルギーを捨て、これを大気が吸収します。つまり大気は地表から(下から)暖められることになります*1。これはちょうど写真2のように不安定で対流が起こりやすい状態です。地表から高度約12kmくらいまではこのようにして対流が盛んに起こるので対流圏と呼ばれます。

 次に写真3のように、水平方向(左右)に温度差がある場合を考えます。寒気(重い)は下にもぐり込むように、暖気(軽い)は上に乗り上げるように対流が起こります。写真3のモデル実験の一番簡単な例として、海陸風があげられます。ある晴天の日を想像します。太陽放射を同じように受け取っても、水は比熱が大きく温まりにくい物質なので、海水温はほとんど上がりません。これに対し岩石(あるいはその砕屑物を主とする土壌)は比熱が小さく暖まりやすい物質なので、地表温度はぐんぐん上昇します。このように海面と地表には大きな温度差ができるので、陸上の大気は暖められ暖気となり、海上の大気は暖められず寒気となります。すると両者の温度差(すなわち密度差)から、実験3のような対流が起こります。つまり海から陸へ向かう風(海風)が吹くわけです。また上空ではこれとは逆向きの風が吹きます。
 夜になると、比熱が小さく冷めやすいため、地表温度はぐんぐん下がり、夜半過ぎには海水温より低くなります。そうすると今度は海上に暖気、陸上に寒気と、配置が逆になり、陸から海へ陸風が吹きます。両者の入れ替わる朝と夕方には、一時的に海陸風がおさまり、朝なぎ、夕なぎと呼ばれます。
 海陸風は、地表温度の影響を受けやすい、せいぜい地上1kmほどの下層大気(大気境界層)の現象です。それより上の大気は自由大気と呼ばれ、そこでの風の吹き方はもっと大規模な対流の表れです。一番大規模な対流は大気の大循環*2と呼ばれ、赤道の暖気と極地方の寒気による対流です。両者が中緯度で出会う境目が、天気予報でおなじみの前線に当たります。(これらについては、後に詳しく学びます)

実習 大気の対流を見る


【*1】 地表から大気への熱の移動には、水蒸気の潜熱による熱輸送も重要です。

【*2】 実際の大気の大循環は水平方向がほとんどです。つまり風というものは、基本的には水平に吹くということです。しかし積乱雲の中の上昇気流のように、局所的にはかなり速い流れもあります。 


作成2001年7月 更新2003年7月