ホーム/目次/第2章 水と大気の星・地球
水/海水と陸水/海の世界/海水の動き/地球の大気/大気の対流/水蒸気と雲/天気図/大気の大循環
本章では化学、物理で習う事柄がよく出てきます(意識的に登場させています)。その都度、簡単に説明していますが、できれば化学、物理の教科書で確認してください。
地学に出てくる化学・物理の基礎・早見表
水はユニークな物質
地表の変化には、水が大きな役割を果たしていることを第T章で学んできました。水は私たちにとって最もなじみ深い物質ですが、地球全体を見ても重要です。そこで今度は地球の水について学びましょう。水は決して平凡な物質ではありません。どんな物質も固有の性質を持ちますが、とりわけ水は大変ユニークな性質を持っています。この水の特質が、そのまま地球の特質になっています。
一つの酸素原子Oと、二つの水素原子Hが結合して水分子H2O ができます。O原子とH原子は互いの電子を共有し合うやり方(共有結合)により結合していますが、両者の電子を引きつける度合い(電気陰性度)が異なるため、電子はよりO原子の側に偏っています。さらに分子の形が対称ではなく、図1のように開いたV字形をしているため、1個の水分子のO原子側が負の、H原子側が正の電荷を持っています(極性)。このような分子を極性分子と言います。もし極性がなければ、分子間に働く力(ファンデル・ワールス力のみ)は大変弱いのですが、正負の静電気力が加わり、水分子どうしは強く引き合っています(水素結合)。このため水は融点・沸点が大変高く、融解熱・蒸発熱も大きいのです。また水分子自身の正負の電荷と陽イオン陰イオンの電荷が引き合うので、水はイオンとなじみやすい(水和)という性質があります。
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図1 水分子の模型 V字形をしているため、一つの水分子の酸素側(図上)が負、水素(下)側が正に帯電する。このようにひとつの分子が正負に帯電したものを極性分子と呼ぶ。これが水のユニークさの原因。 |
水の特質が地球においてどんな役目を果たしているか、簡単にまとめてみましょう。
| 1 | 分子どうしの間に働く引力が強いため、水は融点や沸点が非常に高い。ちょうど地球の気温(平均15℃)において氷、水、水蒸気の状態変化(三態の変化)を行い、多くは水(液体)として存在する。 |
| 2 | 水は比熱が大きい(1cal/g/℃)ので温まりにくく冷めにくい。そのため海洋は温度を一定に保つ役目を果たす。また海流は熱の移動の媒体となり、地球の温度差を緩和する役目を果たす。 |
| 3 | 水は蒸発熱(気化熱)が大きい。そのため水蒸気は大きな潜熱を持ち、水蒸気を含む大気は熱の移動の媒体として働く。 |
| 4 | 水分子が極性を持つため、水はイオン性物質を溶かしやすい(水和)。そのため水は物質の貯蔵庫となり、物質移動の媒体として働く。同時にさまざまな化学反応の場を提供する。 |
| 5 | 以上の水の性質はまた生命にとって極めて重要である。生命の誕生と進化は水のこれらの性質に依拠している。 |
| 6 | 水はCO2をよく溶かし、大気中のCO2量を調節する役目を果たす。大気中のCO2は温室効果を持つので、地球の気温は海が調節していることになる。 |
水はどこにあるか
地上の水はどこにどのくらいあるのか、まとめると次のようになります。
| 海洋 | 海水 | 1×1018 t |
| 氷河 | 陸水 | 3×1016 t |
| 地下水 | 8×1015 t | |
| 湖沼および河川 | 2×1014 t | |
| 大気中 | 1×1013 t |
ここでは何桁の数字になるかに注目しましょう。一番桁数の多い(つまり多量にある)のは海水で全体の97%にあたります。次に多いのが氷河(多くは南極大陸)の氷です。次に多いのが地下水です。私たちには身近な河川や湖沼の水は意外に少ないと感じる人が多いのではないでしょうか。なお氷河、地下水、湖沼水、河川水など陸にある水を陸水と呼びます。地球の平均気温15℃では、水の状態変化(三態の変化)が頻繁に起こります。海洋、湖沼、河川、氷河、地下水、大気中(水蒸気や雲)など、さまざまなところに水があるのは、地球の水が状態変化をしながら地表を循環していることの表れです。*1
このように地球には主に海水という形で大量の水(液体)が存在します。よく地球は「水の惑星」「海の惑星」と呼ばれます。地球のように海を持つ天体は大変珍しく、今のところほかには知られていません。例えば、大きさも生い立ちも地球によく似ている隣の惑星・金星は水(水蒸気も)を全く持たずカラカラに乾燥しています。反対隣の惑星・火星には氷はありますが水はありません。*2
地球の水(海)の誕生は、46億年前の地球誕生に由来します。地球は原始太陽系に漂っていた隕石(微惑星)が衝突合体して誕生したのですが、隕石に含まれていた水分が衝突時に蒸発して、水蒸気として地球を取り巻きました。また高温だった原始地球からは水蒸気が盛んに吹き出していました。その後、地球が冷えるにつれ、水蒸気は雨となって降り注ぎ、海が誕生したと考えられています。少なくとも40億年前頃には、すでに現在とそれほど変わらない規模の海があったことが分かっています。(詳しくは第W章で学びます)
【*1】 水と言えば地表や大気中を循環する水が目立ちます。本章でもそれを対象としますが、実は地球深部(地殻〜マントル)においても水は大変重要です。海洋プレートとともにマントルへもたらされた水はマグマの発生プロセスやその化学組成に大きな影響を与え、結果的にカコウ岩の大陸地殻という地球独特な地殻を作りました。最近ではプレートの沈み込みに伴う地震発生やマントル対流そのものにも、水が大きな役割を果たしているとして注目されています。「水の惑星」とは単に海があり雨が降る、と言うだけでなく、内部まで含めた地球の特徴を指しているのです。
【*2】 金星も誕生のプロセスは地球とほぼ同じであり、誕生時には水蒸気に取り巻かれていたでしょう。しかし水蒸気は太陽の紫外線で分解されてしまい、軽い水素は宇宙へ逃げたと考えられます。そのため現在の金星に水分は全くありません。同じことは地球でも起きていましたが、金星より太陽から遠い地球では水蒸気を失う前に海ができ、一度海ができるとCO2が海に溶け込んで温室効果が減りさらに気温が下がる、といった金星とは異なるプロセスに入ったと考えられます。
火星の表面には水の流れた跡が多く見られ、かつて水があったことは間違いありません。火星の水がどうなってしまったのか、注目されるところです。地下に氷としてあると言う説があります。
木星の衛星エウロパは主に氷からできている天体ですが、表面の氷の下には大量の水があると言われています。そのため生命の存在を期待する説もあります。なお名前から誤解がありますが海王星に海はありません。
FAQ.1 「融ける」と「溶ける」はどう違いますか?
状態変化は「融ける」 ・・・氷が融けて水になる
溶解は「溶ける」 ・・・塩が水に溶ける
と使い分けます。しかしあまり区別しない例も見られます。 例えば、融岩と言うべきだが溶岩と言っている(昔は熔岩と書いた)。
作成2001年7月 最終更新2003年7月