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ホーム目次/第1章 身近な土地の生い立ち
地形図を読む地面は何からできているか台地と低地の生い立ち海面の上下と氷期河川がつくる地形私たちの第四紀


河川が作る地形
 本章では台地と低地や氷河地形について学んできましたが、その他にもさまざまな地形があります。日本で見られる地形は、主に河川の作用によるものです。
 図のA、Bは河川の断面を表しています。日本のように、成長中(現在も隆起中)の険しい山地を流れる河川は、Aのように急で凸凹した線となります。ところが、地殻変動が止み山地が隆起しなくなったまま長い時間が経つと、次第にBのようになってゆくでしょう。AからBへの変化のうち、土地が削り取られてゆく部分を〈赤〉で示しました。このような作用を侵食と呼びます。これに対し、埋め立てられて土地が新たにできてゆく部分を〈青〉で示しました。このような作用を堆積と呼びます。侵食により削り出された土砂を下流に運んでゆく働きを運搬と呼びます。侵食・運搬・堆積をよく河川の三作用と呼びます*1。日本では梅雨末の集中豪雨や台風などの際に、しばしば土砂崩れ、土石流、洪水などに見舞われます。私たちにとっては災害以外の何物でもありませんが、これも長年繰り返されてきた河川の作用の一コマです。河川の作用が活発な日本のような若い河川(A)に対し、時間とともに侵食と堆積のバランスがとれて、どちらもあまり行われなくなった河川を平衡河川(B)と呼びます。そのような河川は大陸地域によくみられます。AからBへの変化は、土地が次第に海面の高さに近づいてゆく過程です。海面は河川の作用に対して基準となる高さの面(侵食基準面)です。

侵食 土地が削られ失われてゆく作用
運搬 侵食により削り出された砕屑物を下流に運ぶ作用
堆積 運搬されてきた砕屑物が川底、湖底、海底などに地層としてたまっていく作用。

図1 河川の作用と縦断面曲線

 平常の河川の状態では、侵食・運搬・堆積はあまり進みません。これらが大きく進むのは大雨・洪水により流速(流量)が増したときです。河川の上流部はもともと流速が大きく、斜面は急で不安定なので、そこに大雨が降ると山崩れや地滑りが起こり、V字谷がつくられます。つまり上流(山間部)では侵食作用が盛んに起こります。このようにして大量に発生した砕屑物(土砂)は下流へと運搬されてゆきます。一方、中流〜下流部では流速が小さくなるので、粒径の大きいレキから順に堆積してゆきます。特に、河川が山間から平地や盆地に出るところでは、流速が急に小さくなるので運搬できなくなった砕屑物が堆積して独特な地形(扇状地)ができます。さらに下流には広い氾濫原(河原)ができ、自然堤防、三日月湖(河川の蛇行の跡)などの地形が現れます。河口では流速がついに0になるので、運搬できなくなった砂や泥が堆積して三角州ができます。これらの堆積作用は実際には洪水の後に起こります。

侵食運搬と堆積のバランス
侵食・運搬がまさる 堆積がまさる
流速(流量)が大きいとき 流速(流量)が下がるとき
大雨、洪水の時 洪水の後
主に上流 主に中流〜下流
山崩れ地滑りV字谷 扇状地氾濫原自然堤防三角州

アルバム 河川の作用

 平衡に達して広い河原を持つに至った河川では、侵食はほとんど働きません。ところが海面低下や土地の隆起により平衡がくずれ、再び侵食が強まることがあります。こうして始まった侵食は、やがて次の平衡に達すると止まり、再び広い河原ができます。このように新しい河原のまわりに、一段高い古い河原が残ったものを河岸段丘と呼びます。河岸段丘の段数は、このような河川の平衡を崩すできごとの回数に対応します。
実習 ステレオ写真の立体視

その他の地形
 河口までやって来た砕屑物は、今度は海水(波や潮流)により運搬されます。多くはさらに沖の海底に地層として堆積します。砂浜や砂州の砂はこのような堆積物の一部です。また海水(波)は海食崖など侵食作用の担い手としても重要です。 
 本節では主に河川の作用による地形を紹介しましたが*2、それ以外の地形にもいろいろなものがあります。地盤が石灰岩からできている場合にはカルスト地形など、独特な地形ができます。海外、特に乾燥地帯には、日本とは全く異なる地形があります。
 本章を通して、いつも登場してきた物質は何でしょうか。それは水(氷を含む)です。私たちの暮らす土地にとって、水の役割が大きいことが分かったと思います。


【*1】堆積の大部分は海底で起こり、侵食・運搬も海中でも起こりまの。侵食・運搬・堆積は河川の3作用と言っても、河川にのみ起きる現象だと誤解しないでください。

【*2】ここで紹介したような河川地形はしばしば地形の代表的サンプルとして登場しますが、それは私たちの日常生活の感覚で分かりやすいからです。流水(河川)は地球の最も重要な特質ですが、私たちにはなじみのない大陸の姿、乾燥地帯、海底、衛星から見下ろして分かるような大地形も大変重要です。


作成2001年5月 更新2003年4月