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ホーム目次/第1章 身近な土地の生い立ち
地形図を読む地面は何からできているか台地と低地の生い立ち海面の上下と氷期河川がつくる地形私たちの第四紀


海面の上下と氷期
 なぜ海面は上下するのでしょうか。それは海水が増えたり減ったりするからです。それでは、なぜ海水が増えたり減ったりするのでしょうか。地球上の水の量は一定ですから、海水が減る以上、かわりに何かが増えているはずです。それは陸上の氷です。
 現在でも南極やグリーンランドなどの高緯度地方、あるいは高山では、気温が低いため降った雪が融けずに次第に厚い氷になっていきます。このような氷はやがてゆっくりと低いところへ流れて行きます。このような氷を氷河と呼びます。地球全体が寒冷化すると、この氷河が分厚く大きく発達した分だけ海水は減り、海面は低下します。逆に地球が温暖化すると、氷河が衰退し海面は上昇します。したがって、関東平野をつくってきた海面の上下は、実は地球の気温の上下に他なりません。シナリオでBとした2万年前には、海面が最大130mも低下したと考えられています。このように地球全体が寒冷化した時期を氷期と呼びます。氷期は今から170万年前くらいから繰り返し訪れるようになりました。そこで、170万年前以後の時代を(現在を含めて)氷河時代と呼びます。

氷期の日本
 2万年前にピークを迎えた氷期の日本は、どのような状態だったのでしょうか。現在に比べて、どのくらい気温が低かったのでしょうか。さまざまな推定がされていますが、その一つとして、山地に残された氷河地形から推定する方法を試してみます。
 高いところほど気温が低くなるので、1年中雪が融けず氷河ができるようになる高さを雪線と呼びます。現在の日本には氷河はありません。しかし、北アルプス(飛騨山脈)や北海道日高山脈には、U字谷カールなど、かつて氷河が浸食した地形が残されています。これらの地形から当時の雪線を知ることができます*1。また現在の雪線は気象調査で知ることができます。現在と氷期の雪線の比較から、氷期の気温は現在より8℃ほど低かったと推定されます。つまり、東京が札幌なみの気温であったことになります。

写真1 北アルプスの氷河地形
 日本を代表する険しい山岳である北アルプス、槍ヶ岳〜穂高岳の東面にはカールやU字谷などの氷河地形が見られる。
1986年7月下旬、蝶が岳より

 当時の日本は現在とはだいぶ違っていました。海面低下によりかなりの期間、アジア大陸と陸続きになりました。寒冷な気候に適応した北方系大陸系の動植物が多く移り住んでいました。ナウマンゾウ(日本のマンモス)などが有名です。その後地球が温暖になり、再び日本が島国に戻るにつれ、これらの多くは絶滅してしまい、現在では化石として見出されるのみです。高山などの限られた環境に生き残った種は、「生きる化石」と呼ばれ、雷鳥(北アルプス)やナキウザギ(北海道大雪山)などが知られています。

写真2 ライチョウ
 アルプスの登山者にはおなじみのライチョウは氷期の遺存種
2002年8月下旬、北アルプス鹿島槍ヶ岳にて

アルバム アラスカの氷河

アルバム 日本の氷河地形


【*1】 氷河の末端には、氷河が運んできた岩砕の小丘(モレーン)ができるので、それと知ることができます。単純に考えると、氷河の末端(モレーン)が当時の雪線を表していそうですが、なかなか簡単にはいかないようです。地形や積雪量の影響により、同じ地域・同じ時期の氷河でもさまざまな末端位置を示すからです。


作成2001年5月 更新2003年4月